はじめに
コロナ禍を機に、在宅ワーク など、多様な働き方が定着しつつあります。
在宅ワーク をする際には、ほぼ確実にPCを必要とし、そのPCで文字入力を行う際には、キーボードが使われることが多いといえます。
また、PCゲームの隆盛により、キーボードでゲームをする、という方も多くいらっしゃると思います。
ラップトップPCでは、キーボードは本体に付属していると思いますが、そうでない場合には、外付けのキーボードを使うこととなります。
このような外付けのキーボードを買おうと思うと、数千円のものから、数万円のものまで、幅広い価格帯のものが販売されています。
市販品のキーボードは、だいたい所定のキー配置であり、あまり多くのバリエーションはありません。また、当たり前のことですが、キーを押すと、キーに印字された文字などが入力されます。
一方で、ほとんど市販されていないキーボードを作って楽しむ、という趣味が存在します。
それが、今回ご紹介する「自作キーボード」です。
某TV番組でも取り上げられたこともあり、存在自体は認知している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事は、その「自作キーボード」の沼を知ってもらったうえで、気軽に飛び込んでもらいたい、という思いで執筆しています。
「沼」というとイメージが良くないかもしれませんが、楽しむ深さと幅があり、非常に懐の深い趣味だと私は思っています。
色々な楽しみ方があるので、自分に合いそうな「沼」があったら、ぜひ気軽に飛び込んでみてください! 自作キーボードは万人に開かれています。
自作キーボードとは?
「自作キーボード」といったときに、共通認識とまでいえる定義はないものと思っていますが、この記事では、「何らかの組立作業を伴うキーボード」とします。
通常の市販品のキーボードは、ケーブルを挿せばそのままキーボードとして使用できるものが大半です。
わざわざ組み立ててまで何故キーボードを作るのか、という疑問を持たれるかもしれません。
これに対する答えは、その人がハマっている「沼」の種類によって変わると思います。例えば、カスタイマイ ズ性、見た目のカッコよさ、打鍵感・打鍵音、キーの配列などなどが挙げられます。
この沼については後述します。
この記事では、自作キーボードを大まかに2つに分類して紹介します。
一方は、「DIY キーボード」、もう一方は「カスタムキーボード」です。
この記事において、「DIY キーボード」とは、はんだ付け、ファームウェア の作成などのやや高度な作業が伴うものを指すこととします。
もう一方の「カスタムキーボード」とは、組立作業があっても、スイッチのはめ込み、キーキャップの取り付け程度か、高々ドライバーでのネジ止め程度の作業までが必要となるものを指すこととします*1 。
DIY キーボードは、実用性もさることながら、どちらかというと「自分で作る」ことに主眼が置かれているといえます。
自作キットといわれる場合もあり、パーツ類がセットになったものを購入することになります。
一方のカスタムキーボードは、パーツを選んで「自分好みのものを入手する」ことに主眼が置かれているといえます。
半完成品という表現が適切かもしれません。
まず、それぞれについて魅力を挙げていきたいと思います。
なお、時々専門用語らしきものが出てくるかもしれません。
その際には、以下のARCHISS(アーキス)さんのサイトを参照してしてみてください。
archiss-keyboard.jp
今回は、主にメカニ カルキーボードに焦点を当てていきたいと思います。
DIY キーボードの魅力
自由さ
DIY キーボードの最大の魅力は、「とにかく自由であること」だと思っています。
キーボードは左右に分離していたっていい*2 し、碁盤の目状にキーが並んでいてもいいし*3 、数字キーが無くてもいいし*4 、トラックボール と合体していてもいい*5 のです。
また、特定の用途専用のキーボード(例えば、マクロパッド*6 )があってもいいし、観賞用のキーボードがあってもいいのです。
特に日本では、多種多様なDIY キーボードが存在します。
様々な開発者が、それぞれの思想により、「自分だけのキーボード」を設計しています。
すなわち、非常にニッチだが、特定の用途、特定の思想にはピッタリのキーボードが多数存在しています。
きっとあなたに刺さる一台があります。
作る楽しさ
DIY キーボードは、たいていの場合は電子工作をすることになります。
確かに組み立ては簡単ではないですが、できあがって動いたときの感動はひとしおです。
また、作って終わりではなく、作った後に使うことができるのも面白い点だと思っています。「使えるプラモデル」という表現も聞いたことがありますが、言い得て妙だと思います。
加えて、DIY キーボードは、ある意味で「永久に未完成」です。
後述するように、デコレーションしたっていいし、よりよい打鍵感や打鍵音を求めて調整したっていいし、キースイッチやキーキャップを付け替えてもいいし、キーの割り当てを変更してもいいのです。
そうして、自分だけの、自分にとって最高のキーボードを作り上げていく楽しさもあります。
悩む楽しさ
DIY キーボードは、何を作るか、という時点でかなり悩めます。
キットによっては、プレートの色等を選ぶことができ、デコレーションでも悩めます。
また、必須パーツであるキースイッチ、キーキャップについても多種多様な選択肢があり、非常に悩み甲斐があります。
キースイッチやキーキャップは、組み立て後にも交換することができる場合が多く、延々と悩むことができます。
さらには、ハードウェアの面だけでなく、ソフトウェアの面でもたくさん悩むことができます。
このキーを押したときにどのキーがPCに送られるか、というのを自由に変更できます。一つのキーを押した際に、同時押しされたことにすることも可能です。
こうしたことを悩む時間もまた楽しいものです。
多様な沼
DIY キーボードにも、カスタムキーボードにもある程度共通する「沼」について紹介します。
キーボード本体だけでも十分に沼なのですが、さらにはこんな沼もありますよ。
キーキャップ
キーボードの華といえばキーキャップです。キートップ とも呼ばれます。
MX互換等と呼ばれる十字型の穴があるキーキャップは、特に種類が多く、好みのものに交換することができます。
見た目に大きな影響を与えますので、見た目にこだわり始めると沼です。
キーキャップに1万円とか2万円とか、頭おかしいんじゃないかと思っていた時期が私にもありました……
カッコいいキーキャップはそういった値段になっていることも多くあり、しかも場合によっては再版されない、ということもあります。一期一会ですね。
また、見た目が変わるのはもちろんのことですが、様々な種類の形状があり、キーキャップによって打ちやすさは大きく変化します。
ぱっと見は小さな違いでも、指が直接触 れる箇所なので、その違いによって打ちやすさはかなり変化します。
よく、PBT*8 とか、ABS*9 とかが書いてありますが、これはキーキャップを構成する素材です。
陶器製のキーキャップ*10 なんかも存在します。
こういったキーキャップの形状、素材は、後述する打鍵音にも影響を与える要素です(後述する動画参照)。
ここで、キーキャップで忘れてはいけないのが、「アルチザンキ ーキャップ」*11 の存在です。
何かというと、手作りのキーキャップです。
キーボードに個性と彩りを添えてくれます。
様々な媒体で販売されていますが、例えばBOOTH*12 等で個人が販売されているものもありますし、遊舎工房さんでも取り扱い*13 *14 があります。
一つあるだけでキーボードの雰囲気がガラリと変わりますし、純粋に見ていてきれいなもの、カッコいいものもたくさんあります。
これこそ多数生産されない一点ものも多く、一期一会の世界ですね。
キースイッチ
メカニ カルキーボードの根幹部分をなすパーツです。
一昔前は、Cherry社*15 のスイッチがデファクトスタンダード でしたが、これの互換品が今では多く出回っています。
ここでは詳細な説明は省きますが、メカニ カル式のキースイッチは、その特性から、
に分類されます。
それぞれ、赤軸、茶軸、青軸等とも呼ばれますが、Cherry社のスイッチがその色をしていたにすぎず、直接的に上記の分類で呼ばれることが多い印象です。
詳細には、以下の記事をご参照ください。
www.itmedia.co.jp
想像に難くないことですが、スイッチによって押し心地、すなわち打鍵感が大きく左右されます。
押した際の感触だけにフォーカスしたとしても、重さ、重さの変化、なめらかさ、軸のブレ、(タクタイルタイプにあっては)タクタイル感等の要素があり、スイッチによって個性があります。
また、スイッチによって打鍵音も大きく左右されます。
クリッキータイプは、押した際に音を鳴らす機構が備わっていますが、そうでない他のタイプでも、底まで押し切った際の音(底打ち音)が鳴ります。
この音も、スイッチによってかなり個性が出ます。
さらに、底打ち音を減らすために、衝撃を吸収する緩衝材が配置されていたり、板バネが配置されている「サイレントタイプ」も存在します。
こういった押し心地や音を調整するために、潤滑剤による潤滑(ルブ)もよく行われます。
ルブを行うには、キースイッチを分解する必要があるのですが、わざわざ分解してまでやることか? と思っていた時期が私にもありました……
ルブの有り無しでは、全然感触が変化するスイッチもあります*16 。
加えて、メカニ カルキーボードに使われるスイッチは、共通の規格で作られている場合が多く、異なるスイッチのパーツを組み合わせて自分好みのスイッチを作ろうという試みもあります*17 。
色々なスイッチが次々に開発される状況にあり、広大な沼が広がっています。
打鍵感・打鍵音
キースイッチでほとんど打鍵音が決まると思われるかもしれませんが、実はそんなことはありません。
キーボード本体の構造にかなり影響されますし、キーキャップにもかなり影響されます。
例えば、キーキャップを固定するプレート*18 の素材によって、打鍵音は大きく変化します。
VIDEO youtu.be
VIDEO youtu.be
キーキャップの形状についての比較動画はこちらです。
VIDEO youtu.be
そもそも、キーボードのケースの素材によっても打鍵音が変化します。
VIDEO youtu.be
また、フォームと呼ばれる吸音材を入れるか入れないかによっても打鍵音が変化します。
さらに、打鍵音を変化させるための様々な改造(Mod)が行われる場合もあります。例えばこんな風にテープを裏面に貼るTape modがあります。
VIDEO youtu.be
多くの要素によって打鍵音が変化するため、非常に奥が深いです。
打鍵感に関しては、これまたスイッチでほとんど決まると思われるかもしれませんが、キーボードの構造の寄与率も大きいといえます。
カスタムキーボードでは、こういった部分にこだわりが詰まっており、その分いいお値段もするというわけです。
例えば、カスタムキーボードでは、「ガスケットマウント」なる方式が採用されている場合がありますが、これは、スイッチを固定するプレートをキーボード本体に取り付ける際に、スポンジを介して固定する方式を指します。
スポンジを介してプレートを固定すると、打鍵する際の衝撃がスポンジで吸収されるので、打鍵感が柔らかくなる効果があります。また、スイッチプレートの素材によっても、打鍵感の柔らかさは変化します。
VIDEO youtu.be
さらに厄介なことに、こういった柔らかくする効果をもたらすマウント方式(ケースへの固定方式)を採用すると、全体の打鍵音が変化します。
昨今では、スイッチプレートを上側のケース固定する「トップマウント」なる方式もまた多くなってきており、一概にどのマウント方式が優れているとは言えません。また、個人の好みによる部分も多くあります。他のマウント方式については、以下の記事をご参照ください。
scrapbox.io
実際にキーボードを使っている際の「気持ちよさ」に関係する部分ですので、こだわり甲斐がある部分だと思っています。
物理配列
お手持ちのキーボードをご覧ください。
きっと横方向(行方向)にずれた配列になっていると思います。
このような配列は、ロウスタッガード と呼ばれます。
これに対して、特にDIY キーボードにおいては、非常に多様な配列がみられます。
例えば、格子状にキーが配置された配列(オーソリニア)であったり、縦方向(列方向)にずれた配列(カラムスタッガード )になっていたりします。そもそも、左右に分離していたりもします。
特にDIY キーボードにおいては、好きな物理配列を選択することができます。自分で設計すれば、本当に自分の手の大きさや打鍵スタイルに合ったキーの配置にもできます。
確かに、人間の身体はおおよそ左右対称であるにもかかわらず、通常のキーボードの配列が左右対称でないのは非合理であるようにも思われます。また、人間の指の動きや指の長さの違いを考えると、横一列にキーが並んでいるのは果たして人間工学的に正しいのか、という疑問もあります。
そういった点から、多種多様な配列が生み出されていると理解しています。
また、数字行がない配列もありますし、モディファイヤキー*19 が削られてしまっているキーボードすらあります。
このようにキーが少なくなると、手をあまり動かさずに打鍵でき、結果として早く打鍵できる場合があります。
(キーが少ないとミニマルな見た目になってカッコいい、という話もちょっとあります。)
カスタムキーボードにおいても、一部キーのレイアウトを選択できるものもあります。
キーボードはヒューマンインターフェースデバイス として実際に存在するわけですから、物理的なキーの配置は、使いやすさに直結するといえます。
こういった使いやすさを追求することも、沼の一つです。
論理配列
またまたお使いのキーボードを眺めてみてください。
アルファキー(アルファベットキー)に関しては、Q, W, E, R, T, Y...と並んでいると思います。このようなキーの配置は、「QWERTY配列 」と呼ばれます。
この配列の起源ですが、例えば以下のように研究されています。
kotobaken.jp
論理配列とは、このようなキーの割り当てを指し、これを変更してしまおう、という話もあります。
例えば、通常のキーボードでは、A, S, D, F, G...となっているところを、母音をまとめて、A, O, E, U, I...となっていてもいいじゃないか、打ちやすい位置によく使うキーを割り当ててもいいじゃないか、という発想です。
つまり、物理的なキーの位置とは独立して、このキーが押されたときにどの文字が入力されたことにする、というものを変更してしまうわけです。
例えば、以下の記事に記載されるような、QWERTY配列 でない論理配列が存在しています。
realsound.jp
さらには、日本語のかな入力用の論理配列も存在します。
キーボードを使う主目的は文字の入力なわけですから、こういった点にこだわろう、という点もなんとなくご理解いただけると思います。
今までに紹介した沼は、キーボード自体としての沼でしたが、論理配列に関しては、インターフェースデバイス として、どのように文字を入力していくか、という点にフォーカスしているといえます。
キーマップ
先ほど、物理配列の部分で、数字キーがないキーボードの話をしました。
では、そのようなキーボードで数字キーが入力できないかというと、そんなことはありません。
「レイヤー」と呼ばれる機能を使っていきます。
何故「レイヤー」と呼ばれるかというと、特定のキーを押している間は別のキーアサイ ンの層に移動し、その層におけるキーが入力される、という概念だからです。
例えば、特定のキーを押している間は、「Q」 を押すと「1」が入力され、「W」を押すと「2」が入力される、という具合です。
Fnキーを押しながらだと、サブとして書いてあるキーが入力されるキーボードがありますが、イメージとしてはそれに近いです。
このように、どのレイヤーにどのようなキーアサイ ンを割り当てるかを、「キーマップ」と呼んだりします。
もし、数字キーがないキーボードだとすると、数字キーや記号キーを別のレイヤーに押し込む必要があるわけですが、その配置をどうするか、というのも悩ましいところです。
また、先ほど説明したトリガーとなるキーをどこに配置するか、というのも悩ましいポイントです。
さらに、短く押すと「A」が入力され、長く押すと「Ctrl」を押したことになる、という機能(Tap-Hold機能)も存在します。
先ほど、モディファイヤキーがないキーボードが存在する、という話もしましたが、そのようなキーボードでは、Tap-Hold機能をうまく活用していくことになります。
もっというと、一つのキーを押した際に、同時押ししたことにすることも可能です。
例えば、特定のキーを押した際に、Ctrl+z(元に戻すのショートカット)を押したことにすることもできますし、Ctrl+マウスホイール下(拡大の操作)を行うこともできます。
マクロパッドでは、こういったショートカットキーをいくつか登録しておく、という使い方もおすすめです。
自作キーボードでは、キーマップをある程度自由に変更できますので、より使いやすい一台にしていく楽しみ(沼)がまた存在します。
でも難しそう……
カスタムキーボードは、多少の組み立てが必要であるにせよ、たいていの場合は、そこまで高度な組み立ては要求されないといってよいと思いますので、以下では、DIY キーボードの組み立てについて説明します。
DIY キーボードの組み立ては、主に「ハードウェア」と「ソフトウェア」に分けられます。
DIY キーボードは、オープンソース 文化、同人文化等に立脚している側面があり、文字通り「自分でやる」必要が生じます。
具体的には、DIY キーボードは、部品が同梱されたキットを購入し、必要な部品(例えば、マイコン ボード、キースイッチ、キーキャップ等)を入手して、はんだづけし、ファームウェア を作成して書き込む必要があります。
組み立てに失敗すると、キーボードとして動作しない、動作はするが不便、ということにもなりかねません。
また、個人で「頒布」している場合も多く、不具合が後で発覚する場合もありますし、市販品のように十分なサポートを受けられるとも限りません。
そういった面も含めて、ドキドキしながら作製していくのがまた醍醐味でもあったりします。もし、そういったリスクが許容できないのであれば、素直に市販品を使われたほうがよいとは思います。
とはいえ、苦労して組み立てた分だけ、完成して動いた際の感動は大きなものになると思います。
また、後述するように、せっかく買ったのに動かない、というリスクを減らす方法はたくさんあります。
まずは、ご自分のできそうな範囲でチャレンジしてみる、というのがよいと思います。
以下、おそらく不安に思われる組み立てのポイントについて記載していきます。
ハードウェア
ハードウェア面での組み立てのネックといえば、おそらく「はんだづけ」だと思います。
はんだづけに関して言えば、そこまで細かい部品のはんだづけを要求されませんので、道具さえ揃えれば、ハードルが高いとまではいえないと思います。
はんだづけのテクニックに関しては、電子工作に共通しますので、様々なところでも紹介されています*20 。DIY キーボードに関して言えば、例えば以下の記事が参考になると思います。
biacco42.hatenablog.com
また、実際のはんだづけの作業の様子も紹介されている動画もありますので、ご参照ください。
VIDEO youtu.be
組み立ての際には、十分な時間をとって、焦らずに作業を行うことをお勧めします。
少なくとも3時間くらいはみておいた方がよいでしょう。
はんだづけは、付けるのは簡単ですが、剥がすのは大変な場合も多いですので、取り付ける順番、向きなどを慎重に確認しながら、ビルドガ イド通りに作業を一つずつ進めていくとよいと思います。
取り返しのつかない系の失敗としては、PCBのパッドを剥がしてしまう、というものがあります。これは、部品を剥がそうとしなければそうそうその状態には陥らないといえますので、間違えずに作業することがとにかく重要です。
はんだづけに自信がない、という方は、上記記事で記載されているような、部品点数が少なくて仮に失敗しても財布がそこまで痛くないもので練習してみる手もあります。また、はんだづけをほとんど必要としないか、全く必要としないキット*21 を選択する手もあります。
さらには、遊舎工房さんでは、はんだづけ等を行ってくれるサービスもあります。
キーボード組み立てサービス shop.yushakobo.jp
ただ、個人的には、DIY キーボードの醍醐味は、「自分で作ること」そのものにあると思いますので、ぜひご自分で製作にチャレンジすることをお勧めしたいです。
ハードウェア面の組み立ての難易度は、キットに大きく依存しますので、購入の前にビルドガ イドを読んで判断していただくか、実店舗であれば、店員さんに聞いてみるのもいいかもしれません。
また、遊舎工房さんでは、工作室ではんだごて等の機材をレンタルするサービスも行われています。技術的なサポートも受けられるようなので、店舗に足を運べる方は利用する手もあるかもしれません。
yushakobo.jp
ソフトウェア
DIY キーボードを組み立てる際のもう一つのネックは、ソフトウェア面であると思います。
私自身もITエンジニアではないので、その点がやや不安でした。
ここで、DIY キーボードにおいて、プログラミングの知識が必要かといわれると、必ずしも必要ではない、というのが昨今の事情だと認識しています。
どういうことかを以下で説明していきます。
自作キーボードにおいては、キーボード用のオープンソース ファームウェア *22 が存在しています。
よって、そもそも一からファームウェア を作成する必要はありません。
とはいえ、一昔前までは、黒い画面でコマンドを打ち込んで環境を構築し、コンパイル する必要があったようです。
仮に、この作業をやるとしても、大学で一コマだけ情報の授業があってコンパイル したことがある、という程度でもなんとかなるように思います*23 。
しかしながら、自分でファームウェア をビルドしようとすると、エラーを読んでコードを修正できる、公式のドキュメントを読むことができる、わからないことは調べられる、というレベルの解決力は求められる場合があるといってよいでしょう。
じゃあ、全くプログラミングとかをやったことがないけど難しいですか、というと、最近は大丈夫なものが比較的多い、というのが答えになります。
例えば、「Remap」と呼ばれるwebサービス があります。
この「Remap」では、ファームウェア の作成、書き込み、キーマップの変更*24 等が、マウス操作のみでも行えます。プログラミングに関する知識は必要がない、といっても過言ではないと思います。
詳細な手順の程度については、以下のサイトをご参照ください。
salicylic-acid3.hatenablog.com
なお、QMKについていえば、たまに「破壊的変更」が行われる場合があり、0.18系から0.19系に移行する際には大きな変更が行われました。
これに関して、「Remap」は、しばらく0.18系のみをサポートしていた状態でしたが、比較的最近、0.22系に対応していただいた形です。詳細については、以下の記事をご参照ください。
www.eisbahn.jp
一度Remap対応のキーボードを組み立てたことがありますが、手順に沿ってマウスをポチポチしていくだけでキーボードが動くようになり、非常にスムーズでした*25 。
そもそもとして、上記Remapの前から、「VIA」というツールも存在しています*26 。
salicylic-acid3.hatenablog.com
このツール単体では、ファームウェア の書き込みができないので、真っ先に紹介はしませんでしたが、キーマップの書き換えは、VIAでも簡単に行うことができます。
また、「Vial」と呼ばれるキーマップ変更ツールもあります。
Vialに対応したキーボードのビルドガ イドもよろしければご参照ください。
kbdbuild.vercel.app
このようなツールに対応しているか否かは、そのキーボードのビルドガ イドに記載されているはずです。
ご覧になっていただき、もしRemap等の手順が記載されていなければ、他の方法*27 でキーマップを書き換える必要があります。
とはいえ、コードを編集してコンパイル する必要があるケースは、ほとんど発生しないといえます。
よって、プログラミングの知識が必要かといわれると、必ずしも必要ではない、という状況であると思います。
いずれにせよ、購入しようと思ったキーボードのビルドガ イドを見ていただき、ソフトウェア面でもいけそうか、というのを事前に判断していただくのがよいかと思います。
DIY キーボードにおいて、組み立てたはいいが何やら挙動がおかしい、というのはよくある話です。
初めてだと、何が原因でこうなっているかの検討もつかないと思います。とはいえ、キーボードの回路はそこまで複雑ではありませんので、だいたいはお決まりのパターンがあるようです。
遊舎工房さんの記事で、何が原因かを切り分けるためのフローチャート を作成されているものがありました*28 。
shop.yushakobo.jp
ちょっとやってみたけどよくわからない、という場合、コミュニティに質問するのもありですが、原因を推測するための手がかりを極力記載していただくのがよいと思います。
もし、調べてもわからないことが発生した場合は、購入先(キット製作者)に問い合わせる形になると思います。
最低限の礼節さえわきまえていれば*29 、助けてくれる人が多く、初心者にもやさしいコミュニティであると感じています。
私もコミュニティに助けられながら自作キーボードを製作しており、コミュニティの皆さんには感謝してもしきれません。
ネット上の誰かに聞いてみる勇気と礼節があれば、コミュニティの力も借りながらトラブルを解決できると思いますので、安心して(?)沼に飛び込んできてください。