ぴろりのくせになまいきだ。

世間に平和はおとずれなぁい

アクリル積層ケースのキーボード「floes46」を作った話

はじめに

オーソリニア*1の一体型キーボードが欲しくなったので設計してみました。
会議室でPCにてメモを作成する機会がちょこちょこ発生していたのですが、いきなりロースタッガード(普通のキーボード)を使おうとすると発狂しそうになっていたので、持ち運びが面倒でない一体型のキーボードを欲していました。

そうした折、遊舎工房さんでレーザーカットの半額セールが開始されたので、アクリル積層でケースも作るか、と思い立って作ってみました。

名前は、ケースがマットの透明アクリルを採用しようとしていた点で、なんか「氷」っぽいなあと思ったので、「氷盤」または「流氷」等の意味がある「floe」と、キー数をくっつけて命名しました。

七色に光らせてみた図

今回、スイッチはSea Glass*2を採用しています。
キーキャップはいったんKAT Alphaをつけていますが、何をつけて運用するかはまだ迷っています。

以下、このキーボードの解説をします。

欲しかったキーボードの要件

今回キーボードを設計するにあたって、求められる要件は、以下の通りです。

  • 一体型である
  • 打鍵音が静かめである

加えて、オーソリニアのキーボードのミニマルさはやっぱりいいよね、と思うところがあったので、オーソリニアの配列をベースにした配列にしようと思いました。

ここで、単にオーソリニアのキーボードを作るだけでは芸がないと思い、多少装飾にも凝ってみようと思いました。
さらに、せっかくなら打鍵感と打鍵音もいい感じにしたいと思い、ギミックを仕込むことにしました。

特徴点

上記の要件を念頭に置いて設計したキーボードの特徴点としては、以下が挙げられます。

  • オーソリニアを基調とし、左右を分離させ、かつ、最下段を分離させた配列
  • 手のひらの下にロータリーエンコーダを配置
  • 基板の中央に穴から中央の余白をライトアップする構造
  • 半透明のアクリル積層ケース
  • アクリルのスプリングプレートによるマウント

また、アクリルが中途半端に余ることがわかっていたので、パームレストも作ってみることにしました。
以下、それぞれの特徴点について説明します。

配列

オーソリニアを基調とした、左右に分離した配列です。
一度、オーソリニアのキーボードは設計したことがあったのですが、使っていて改善すべきと感じるポイントがいくつかありました。
その一つが、親指キーの位置です。

オーソリニアの配列では、小指側が特に下がっていませんので、手をハの字にして構えることになります*3
そうすると、親指の動く向きが上下方向に近くなり、内側のキーを親指で押そうとすると、空を切る場合がありました。
この点から、親指キー全体を下げることにしました*4

floes46の配列スケッチ

また、オーソリニアの親指キーが4キーあると、迷ってしまう場合がありました。
オーソリニアのミニマルさをややスポイルしている感はありますが、ロータリーエンコーダを手のひらの下あたりに搭載するようにし、触覚上の区切りとしました*5

加えて、最も外側のキーは、素直に長方形に配置してしまうと、小指の付け根が当たってしまうことがあり、0.5u分内側に配置するようにしました。

全体としては、オーソリニアらしさを残しつつ、使いやすさも損なわない配列になったと思います。

ケース

ケースは、とにかくきれいに光らせたかったので、透明系のアクリルにしようと思っていました。
色々考えましたが、乳半のアクリルよりは、マットクリアくらいにしておくのが透明感も残ってよかろうと思い、マットクリアを使っています。

ケースだけで撮影したらレンダリング画像みたいに撮れた図

マウント方式は、基板とスイッチプレートをスプリングプレートに固定し、スプリングプレートを介してケースに固定する方式を取っています。
この方式は、前回設計した「Paren48」でも採用した「インサートプレートマウント」になると思います*6。スイッチプレートをスプリングプレートとしても良かったのですが、ケースの上面とキーキャップの裾の位置を調整する関係上、この構成を採用しました。

なお、積層構成は以下の通りです。

積層構成の概略図

メインのアクリルは3 mm、スイッチプレートは2 mmとしました。

スプリングプレートの設計に関しては、前回同様にたわみ量を計算し、ステンレスのプレートよりは柔らかくなるようにスリットの長さ等のパラメータを設定しました。
今回はケースが長方形ですので、スプリングプレートの設計は結構簡単でした*7
ところで、アクリルというと耐久性にやや不安がありますが、途中で基板がケースに引っかかるようにし、1.5 mm以上の変位は発生しないようにしています(上記図参照)。まあ最悪割れたら割れたで作り直せばいいか、という精神で設計しました。

スプリングプレートに取り付けたアッセンブリ

また、左右に分離した配列としたため、ケースの中央部分に余白(通称「仏陀スペース」)が生じます。
透明ケースだと、その余白から基板が透けて見える形になるわけですが、単にそれでは面白くないと思い、基板自体に大きな穴をあけておき、アンダーグローの光が反射して上側に抜けてくるようにしてみました。

下に配置されるものの色にもよりますが、アンダーグローの光が反射されて見えるので、狙い通りにできたと思います。
ただ、黒い机などに置くとほとんど反射しないので、底面に何か仕込むかなあと考えています。

パームレスト

まあまあな面積のアクリルが余りそうだったので、パームレストも作ってみました。
木のパームレストを持っていはいますが、やや大きいなあと思っていたので、コンパクトなサイズのパームレストがあってもいいなと思っていました。
また、円形のパームレストをアクリルで作ったことがあるのですが、安定しない(それはそう)ので、あまり使っていませんでした。

今回、ほぼ見えない位置ではあるものの、基板自体に装飾を施していました。
この装飾には、敷き詰めパターンの一種である「floret pentagonal」というパターンを採用しています。
この模様を採用したのは、正六角形の敷き詰め模様に近く、氷のイメージとマッチするためです。

基板銅箔による装飾

基板の模様はほとんど見えないのですが、それはそれでもったいないと思い、パームレストにこの模様を採用した装飾を入れてみることにしました。
この模様は、彫刻ではなく、実際にこの形状にカットされたアクリルの層が間に挟まっている形になります。

積層アクリルパームレスト

ほどほどに模様を主張してくれるし、光が回ってきれいなので、結構お気に入りです。
なお、マット系のアクリルは、手触りがサラサラとしているので、あまりべたつかず、パームレストなどの直接触れる部分には向いていると思います。

感想

スイッチをSea Glassにしましたので、打鍵音はかなり静かです。
また、基板の下に空間は存在しているものの、スイッチプレートと基板の間にはアクリル(スプリングプレート)が配置されているので、音が響くということもありません。

それにしても、Sea Glassはいいスイッチだなあと思います。前も書いたかもしれませんが、色が5色混合されていることに注目されがちですが、タッチが軽く、なめらかなスイッチです。目立ったノイズもありませんので、特に追加でルブをする必要もなく、ストックで使えます。
また、あまり知られていませんが、プログレッシブスプリングが採用されていますので、押し始めは軽く、底打ち時にはやや重たくなる特性があるので、ふわっとした打鍵感が味わえます。

なお、他のそこそこ底打ち音がうるさいスイッチをつけてみると、あまり癖のない音が鳴る印象を受けました。
音量としては、インサートプレートでケースに固定されているため、ケースとの音響的な結合度が中程度であり、かつ、材質としてほとんどケース自体からの音があまりしないため、音量はやや控えめ、といった具合に思われます。
他のスイッチでもよいと思いますが、この現状のセッティングが結構気に入っているため、しばらくはそのまま使おうと思います。

打鍵感としては、スプリングプレートがなかなかいい仕事をしてくれているので、底打ち感がかなり柔らかくなっています。ただ、ぽよんぽよんして安定しない感じではないので、打ちにくさは感じていません。
打鍵していると、スプリングプレートが振動しているのを感じることができますが、音として感知しにくい程度の低周波の周波数になっているように思われ、また、振動の持続時間も長くないので、ちょうどいい感じに仕上がったのではないかと思います。

親指を下げた物理配列を採用しましたが、実際に使用していても、他のカラムスタッガード系の配列と似たような感覚で使用することができています。
親指が空を切るのは結構ストレスだったので、手が大きめの方は試してみても良いかもしれません。

また、親指が担当するキーを3キーに減らし、ロータリーエンコーダがあるため、打鍵時に迷うこともなく使えています。
やはり、ロータリーエンコーダはこの位置にないといけないような気がしてきました。

ケース全体の見た目としては、全体的に狙った通りにできたと思います。反射光を利用しているので、その点に関しては調整の余地がありそうですが、きれいに光っているのでいったんはよしとします。

おわりに

今回、会議室で使う割にはずいぶん派手に光るキーボードができてしまいましたが、見た目だけでなく、打鍵感、使い勝手なども比較的よい出来に仕上がったので満足しています。
プラケースもプラケースでいいなあ、と思いました。

基板のデータ、ケースの設計データは公開しますので、規約の範囲内でご自由にお使いください。そのまま発注できるデータもあります。また、スイッチプレートと基板のみでもキーボードとして運用できると思いますので、そのような構成で作製いただくのもコンパクトでよいと思います。
piroriblog.hatenablog.com

この記事は、今回組み立てたfloes46で書きました。

*1:碁盤の目状の配列のこと。

*2:Durock Sea Glass Switches / Linear

*3:この点については以前論じました キーボードにおける物理配列に関する考察 - ぴろりのくせになまいきだ。

*4:スペースだけが下がっている配列の構成は昨年たまに見かけていたので、採用してみたかったのもあります。

*5:私が設計するキーボードのいつもの配列であるとはいえます。

*6:参照: 分割キーボード「Paren48」を作っている話 - ぴろりのくせになまいきだ。

*7:前回のケースは円弧が含まれていたので、その部分の作図が結構面倒でした

自作キーボード沼への誘い

まえがき

この記事は、「自作キーボード」に興味があるけど、どのようなものかがわからない、どういった楽しみ方があるのかがよくわからない、という方に向けた記事です。
記事内のリンクはアフィリエイトなどではありませんので、気軽にクリックしてください。

なお、私も自作キーボードを始める際には、先人の皆さんが書かれた記事を頼りに自作キーボードの世界に飛び込みました。
そのような記事の一つがこちらです。この場を借りて先人の皆さんにお礼申しあげます。
salicylic-acid3.hatenablog.com

はじめに

コロナ禍を機に、在宅ワークなど、多様な働き方が定着しつつあります。
在宅ワークをする際には、ほぼ確実にPCを必要とし、そのPCで文字入力を行う際には、キーボードが使われることが多いといえます。
また、PCゲームの隆盛により、キーボードでゲームをする、という方も多くいらっしゃると思います。
ラップトップPCでは、キーボードは本体に付属していると思いますが、そうでない場合には、外付けのキーボードを使うこととなります。
このような外付けのキーボードを買おうと思うと、数千円のものから、数万円のものまで、幅広い価格帯のものが販売されています。

市販品のキーボードは、だいたい所定のキー配置であり、あまり多くのバリエーションはありません。また、当たり前のことですが、キーを押すと、キーに印字された文字などが入力されます。

一方で、ほとんど市販されていないキーボードを作って楽しむ、という趣味が存在します。
それが、今回ご紹介する「自作キーボード」です。
某TV番組でも取り上げられたこともあり、存在自体は認知している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事は、その「自作キーボード」の沼を知ってもらったうえで、気軽に飛び込んでもらいたい、という思いで執筆しています。
「沼」というとイメージが良くないかもしれませんが、楽しむ深さと幅があり、非常に懐の深い趣味だと私は思っています。

色々な楽しみ方があるので、自分に合いそうな「沼」があったら、ぜひ気軽に飛び込んでみてください! 自作キーボードは万人に開かれています。

自作キーボードとは?

「自作キーボード」といったときに、共通認識とまでいえる定義はないものと思っていますが、この記事では、「何らかの組立作業を伴うキーボード」とします。

通常の市販品のキーボードは、ケーブルを挿せばそのままキーボードとして使用できるものが大半です。
わざわざ組み立ててまで何故キーボードを作るのか、という疑問を持たれるかもしれません。

これに対する答えは、その人がハマっている「沼」の種類によって変わると思います。例えば、カスタイマイズ性、見た目のカッコよさ、打鍵感・打鍵音、キーの配列などなどが挙げられます。
この沼については後述します。

この記事では、自作キーボードを大まかに2つに分類して紹介します。
一方は、「DIYキーボード」、もう一方は「カスタムキーボード」です。

この記事において、「DIYキーボード」とは、はんだ付け、ファームウェアの作成などのやや高度な作業が伴うものを指すこととします。

もう一方の「カスタムキーボード」とは、組立作業があっても、スイッチのはめ込み、キーキャップの取り付け程度か、高々ドライバーでのネジ止め程度の作業までが必要となるものを指すこととします*1

DIYキーボードは、実用性もさることながら、どちらかというと「自分で作る」ことに主眼が置かれているといえます。
自作キットといわれる場合もあり、パーツ類がセットになったものを購入することになります。

一方のカスタムキーボードは、パーツを選んで「自分好みのものを入手する」ことに主眼が置かれているといえます。
半完成品という表現が適切かもしれません。

まず、それぞれについて魅力を挙げていきたいと思います。
なお、時々専門用語らしきものが出てくるかもしれません。
その際には、以下のARCHISS(アーキス)さんのサイトを参照してしてみてください。
archiss-keyboard.jp

今回は、主にメカニカルキーボードに焦点を当てていきたいと思います。

DIYキーボードの魅力

自由さ

DIYキーボードの最大の魅力は、「とにかく自由であること」だと思っています。
キーボードは左右に分離していたっていい*2し、碁盤の目状にキーが並んでいてもいいし*3、数字キーが無くてもいいし*4トラックボールと合体していてもいい*5のです。
また、特定の用途専用のキーボード(例えば、マクロパッド*6 )があってもいいし、観賞用のキーボードがあってもいいのです。

特に日本では、多種多様なDIYキーボードが存在します。
様々な開発者が、それぞれの思想により、「自分だけのキーボード」を設計しています。
すなわち、非常にニッチだが、特定の用途、特定の思想にはピッタリのキーボードが多数存在しています。

きっとあなたに刺さる一台があります。

作る楽しさ

DIYキーボードは、たいていの場合は電子工作をすることになります。
確かに組み立ては簡単ではないですが、できあがって動いたときの感動はひとしおです。

また、作って終わりではなく、作った後に使うことができるのも面白い点だと思っています。「使えるプラモデル」という表現も聞いたことがありますが、言い得て妙だと思います。

加えて、DIYキーボードは、ある意味で「永久に未完成」です。
後述するように、デコレーションしたっていいし、よりよい打鍵感や打鍵音を求めて調整したっていいし、キースイッチやキーキャップを付け替えてもいいし、キーの割り当てを変更してもいいのです。
そうして、自分だけの、自分にとって最高のキーボードを作り上げていく楽しさもあります。

悩む楽しさ

DIYキーボードは、何を作るか、という時点でかなり悩めます。
キットによっては、プレートの色等を選ぶことができ、デコレーションでも悩めます。

また、必須パーツであるキースイッチ、キーキャップについても多種多様な選択肢があり、非常に悩み甲斐があります。
キースイッチやキーキャップは、組み立て後にも交換することができる場合が多く、延々と悩むことができます。

さらには、ハードウェアの面だけでなく、ソフトウェアの面でもたくさん悩むことができます。
このキーを押したときにどのキーがPCに送られるか、というのを自由に変更できます。一つのキーを押した際に、同時押しされたことにすることも可能です。

こうしたことを悩む時間もまた楽しいものです。

カスタムキーボードの魅力*7

所有欲の充足

カスタムキーボードにおいても、DIYキーボードと同じように悩む楽しさはあります。
もちろんそういった面の楽しさもあるのですが、一つは所有する悦びだと思います。

カスタムキーボードは、非常に意匠性の高い、平たく言えばカッコいいものが非常に多くあります。
使用中に裏側等は当然見えないわけですが、そういった普段は見えない場所に装飾が施されたりしている場合もあり、非常に趣味性の高い部分があります。

もちろん、使う上でも基本機能はちゃんとしており、DIYキーボードと同じように、キーの割り当て等のカスタマイズができる場合も多いです。

打鍵感・打鍵音の追求

カスタムキーボードは、配列こそDIYキーボードほどの自由さはないにせよ、打鍵感・打鍵音にこだわったものが多く存在します。
「キーボードなんて使えれば一緒でしょ」「メカニカルキーボードはカチャカチャするだけ」、そう思っている方がいらっしゃいましたら、ぜひ実物を触っていただきたいです。

店頭に置いてある可能性があり、ほぼカスタムキーボードといってよい製品としては、KeychronのQシリーズが挙げられ、例えば以下の製品です。
kopek.jp

もしかしたら、隣に同じキースイッチが刺さったそんなに高くないキーボードが置いてあるかもしれませんので、それと比べてみてください。
私も沼に入りたての頃、これを触ったときに「同じスイッチなのにキーボードでこんなに違うのか」と感心しました。

きっと打鍵する楽しさが味わえると思います。

せっかく普段使いする仕事道具なら、触っていて気持ちいいほうが気分も上がってよくないですか?

多様な沼

DIYキーボードにも、カスタムキーボードにもある程度共通する「沼」について紹介します。
キーボード本体だけでも十分に沼なのですが、さらにはこんな沼もありますよ。

キーキャップ

キーボードの華といえばキーキャップです。キートップとも呼ばれます。
MX互換等と呼ばれる十字型の穴があるキーキャップは、特に種類が多く、好みのものに交換することができます。

見た目に大きな影響を与えますので、見た目にこだわり始めると沼です。
キーキャップに1万円とか2万円とか、頭おかしいんじゃないかと思っていた時期が私にもありました……
カッコいいキーキャップはそういった値段になっていることも多くあり、しかも場合によっては再版されない、ということもあります。一期一会ですね。

また、見た目が変わるのはもちろんのことですが、様々な種類の形状があり、キーキャップによって打ちやすさは大きく変化します。
ぱっと見は小さな違いでも、指が直接触れる箇所なので、その違いによって打ちやすさはかなり変化します。

よく、PBT*8とか、ABS*9とかが書いてありますが、これはキーキャップを構成する素材です。
陶器製のキーキャップ*10なんかも存在します。

こういったキーキャップの形状、素材は、後述する打鍵音にも影響を与える要素です(後述する動画参照)。

ここで、キーキャップで忘れてはいけないのが、「アルチザンキーキャップ」*11の存在です。
何かというと、手作りのキーキャップです。
キーボードに個性と彩りを添えてくれます。

様々な媒体で販売されていますが、例えばBOOTH*12等で個人が販売されているものもありますし、遊舎工房さんでも取り扱い*13*14があります。

一つあるだけでキーボードの雰囲気がガラリと変わりますし、純粋に見ていてきれいなもの、カッコいいものもたくさんあります。
これこそ多数生産されない一点ものも多く、一期一会の世界ですね。

キースイッチ

カニカルキーボードの根幹部分をなすパーツです。
一昔前は、Cherry社*15のスイッチがデファクトスタンダードでしたが、これの互換品が今では多く出回っています。

ここでは詳細な説明は省きますが、メカニカル式のキースイッチは、その特性から、

  • リニア
  • タクタイル
  • クリッキー

に分類されます。

それぞれ、赤軸、茶軸、青軸等とも呼ばれますが、Cherry社のスイッチがその色をしていたにすぎず、直接的に上記の分類で呼ばれることが多い印象です。
詳細には、以下の記事をご参照ください。
www.itmedia.co.jp


想像に難くないことですが、スイッチによって押し心地、すなわち打鍵感が大きく左右されます。
押した際の感触だけにフォーカスしたとしても、重さ、重さの変化、なめらかさ、軸のブレ、(タクタイルタイプにあっては)タクタイル感等の要素があり、スイッチによって個性があります。

また、スイッチによって打鍵音も大きく左右されます。
クリッキータイプは、押した際に音を鳴らす機構が備わっていますが、そうでない他のタイプでも、底まで押し切った際の音(底打ち音)が鳴ります。
この音も、スイッチによってかなり個性が出ます。
さらに、底打ち音を減らすために、衝撃を吸収する緩衝材が配置されていたり、板バネが配置されている「サイレントタイプ」も存在します。

こういった押し心地や音を調整するために、潤滑剤による潤滑(ルブ)もよく行われます。
ルブを行うには、キースイッチを分解する必要があるのですが、わざわざ分解してまでやることか? と思っていた時期が私にもありました……
ルブの有り無しでは、全然感触が変化するスイッチもあります*16

加えて、メカニカルキーボードに使われるスイッチは、共通の規格で作られている場合が多く、異なるスイッチのパーツを組み合わせて自分好みのスイッチを作ろうという試みもあります*17

色々なスイッチが次々に開発される状況にあり、広大な沼が広がっています。

打鍵感・打鍵音

キースイッチでほとんど打鍵音が決まると思われるかもしれませんが、実はそんなことはありません。
キーボード本体の構造にかなり影響されますし、キーキャップにもかなり影響されます。

例えば、キーキャップを固定するプレート*18の素材によって、打鍵音は大きく変化します。
youtu.be
youtu.be

キーキャップの形状についての比較動画はこちらです。
youtu.be

そもそも、キーボードのケースの素材によっても打鍵音が変化します。
youtu.be

また、フォームと呼ばれる吸音材を入れるか入れないかによっても打鍵音が変化します。
さらに、打鍵音を変化させるための様々な改造(Mod)が行われる場合もあります。例えばこんな風にテープを裏面に貼るTape modがあります。
youtu.be

多くの要素によって打鍵音が変化するため、非常に奥が深いです。


打鍵感に関しては、これまたスイッチでほとんど決まると思われるかもしれませんが、キーボードの構造の寄与率も大きいといえます。
カスタムキーボードでは、こういった部分にこだわりが詰まっており、その分いいお値段もするというわけです。

例えば、カスタムキーボードでは、「ガスケットマウント」なる方式が採用されている場合がありますが、これは、スイッチを固定するプレートをキーボード本体に取り付ける際に、スポンジを介して固定する方式を指します。

スポンジを介してプレートを固定すると、打鍵する際の衝撃がスポンジで吸収されるので、打鍵感が柔らかくなる効果があります。また、スイッチプレートの素材によっても、打鍵感の柔らかさは変化します。
youtu.be

さらに厄介なことに、こういった柔らかくする効果をもたらすマウント方式(ケースへの固定方式)を採用すると、全体の打鍵音が変化します。

昨今では、スイッチプレートを上側のケース固定する「トップマウント」なる方式もまた多くなってきており、一概にどのマウント方式が優れているとは言えません。また、個人の好みによる部分も多くあります。他のマウント方式については、以下の記事をご参照ください。
scrapbox.io

実際にキーボードを使っている際の「気持ちよさ」に関係する部分ですので、こだわり甲斐がある部分だと思っています。

物理配列

お手持ちのキーボードをご覧ください。
きっと横方向(行方向)にずれた配列になっていると思います。
このような配列は、ロウスタッガードと呼ばれます。

これに対して、特にDIYキーボードにおいては、非常に多様な配列がみられます。
例えば、格子状にキーが配置された配列(オーソリニア)であったり、縦方向(列方向)にずれた配列(カラムスタッガード)になっていたりします。そもそも、左右に分離していたりもします。
特にDIYキーボードにおいては、好きな物理配列を選択することができます。自分で設計すれば、本当に自分の手の大きさや打鍵スタイルに合ったキーの配置にもできます。

確かに、人間の身体はおおよそ左右対称であるにもかかわらず、通常のキーボードの配列が左右対称でないのは非合理であるようにも思われます。また、人間の指の動きや指の長さの違いを考えると、横一列にキーが並んでいるのは果たして人間工学的に正しいのか、という疑問もあります。
そういった点から、多種多様な配列が生み出されていると理解しています。

また、数字行がない配列もありますし、モディファイヤキー*19が削られてしまっているキーボードすらあります。
このようにキーが少なくなると、手をあまり動かさずに打鍵でき、結果として早く打鍵できる場合があります。
(キーが少ないとミニマルな見た目になってカッコいい、という話もちょっとあります。)

カスタムキーボードにおいても、一部キーのレイアウトを選択できるものもあります。

キーボードはヒューマンインターフェースデバイスとして実際に存在するわけですから、物理的なキーの配置は、使いやすさに直結するといえます。

こういった使いやすさを追求することも、沼の一つです。

論理配列

またまたお使いのキーボードを眺めてみてください。
アルファキー(アルファベットキー)に関しては、Q, W, E, R, T, Y...と並んでいると思います。このようなキーの配置は、「QWERTY配列」と呼ばれます。
この配列の起源ですが、例えば以下のように研究されています。
kotobaken.jp

論理配列とは、このようなキーの割り当てを指し、これを変更してしまおう、という話もあります。
例えば、通常のキーボードでは、A, S, D, F, G...となっているところを、母音をまとめて、A, O, E, U, I...となっていてもいいじゃないか、打ちやすい位置によく使うキーを割り当ててもいいじゃないか、という発想です。
つまり、物理的なキーの位置とは独立して、このキーが押されたときにどの文字が入力されたことにする、というものを変更してしまうわけです。

例えば、以下の記事に記載されるような、QWERTY配列でない論理配列が存在しています。
realsound.jp

さらには、日本語のかな入力用の論理配列も存在します。

キーボードを使う主目的は文字の入力なわけですから、こういった点にこだわろう、という点もなんとなくご理解いただけると思います。
今までに紹介した沼は、キーボード自体としての沼でしたが、論理配列に関しては、インターフェースデバイスとして、どのように文字を入力していくか、という点にフォーカスしているといえます。

キーマップ

先ほど、物理配列の部分で、数字キーがないキーボードの話をしました。
では、そのようなキーボードで数字キーが入力できないかというと、そんなことはありません。
「レイヤー」と呼ばれる機能を使っていきます。

何故「レイヤー」と呼ばれるかというと、特定のキーを押している間は別のキーアサインの層に移動し、その層におけるキーが入力される、という概念だからです。
例えば、特定のキーを押している間は、「Q」を押すと「1」が入力され、「W」を押すと「2」が入力される、という具合です。
Fnキーを押しながらだと、サブとして書いてあるキーが入力されるキーボードがありますが、イメージとしてはそれに近いです。

このように、どのレイヤーにどのようなキーアサインを割り当てるかを、「キーマップ」と呼んだりします。

もし、数字キーがないキーボードだとすると、数字キーや記号キーを別のレイヤーに押し込む必要があるわけですが、その配置をどうするか、というのも悩ましいところです。
また、先ほど説明したトリガーとなるキーをどこに配置するか、というのも悩ましいポイントです。

さらに、短く押すと「A」が入力され、長く押すと「Ctrl」を押したことになる、という機能(Tap-Hold機能)も存在します。
先ほど、モディファイヤキーがないキーボードが存在する、という話もしましたが、そのようなキーボードでは、Tap-Hold機能をうまく活用していくことになります。

もっというと、一つのキーを押した際に、同時押ししたことにすることも可能です。
例えば、特定のキーを押した際に、Ctrl+z(元に戻すのショートカット)を押したことにすることもできますし、Ctrl+マウスホイール下(拡大の操作)を行うこともできます。
マクロパッドでは、こういったショートカットキーをいくつか登録しておく、という使い方もおすすめです。

自作キーボードでは、キーマップをある程度自由に変更できますので、より使いやすい一台にしていく楽しみ(沼)がまた存在します。

でも難しそう……

カスタムキーボードは、多少の組み立てが必要であるにせよ、たいていの場合は、そこまで高度な組み立ては要求されないといってよいと思いますので、以下では、DIYキーボードの組み立てについて説明します。

DIYキーボードの組み立ては、主に「ハードウェア」と「ソフトウェア」に分けられます。

DIYキーボードは、オープンソース文化、同人文化等に立脚している側面があり、文字通り「自分でやる」必要が生じます。
具体的には、DIYキーボードは、部品が同梱されたキットを購入し、必要な部品(例えば、マイコンボード、キースイッチ、キーキャップ等)を入手して、はんだづけし、ファームウェアを作成して書き込む必要があります。

組み立てに失敗すると、キーボードとして動作しない、動作はするが不便、ということにもなりかねません。
また、個人で「頒布」している場合も多く、不具合が後で発覚する場合もありますし、市販品のように十分なサポートを受けられるとも限りません。

そういった面も含めて、ドキドキしながら作製していくのがまた醍醐味でもあったりします。もし、そういったリスクが許容できないのであれば、素直に市販品を使われたほうがよいとは思います。

とはいえ、苦労して組み立てた分だけ、完成して動いた際の感動は大きなものになると思います。
また、後述するように、せっかく買ったのに動かない、というリスクを減らす方法はたくさんあります。
まずは、ご自分のできそうな範囲でチャレンジしてみる、というのがよいと思います。

以下、おそらく不安に思われる組み立てのポイントについて記載していきます。

ハードウェア

ハードウェア面での組み立てのネックといえば、おそらく「はんだづけ」だと思います。

はんだづけに関して言えば、そこまで細かい部品のはんだづけを要求されませんので、道具さえ揃えれば、ハードルが高いとまではいえないと思います。
はんだづけのテクニックに関しては、電子工作に共通しますので、様々なところでも紹介されています*20DIYキーボードに関して言えば、例えば以下の記事が参考になると思います。
biacco42.hatenablog.com

また、実際のはんだづけの作業の様子も紹介されている動画もありますので、ご参照ください。
youtu.be

組み立ての際には、十分な時間をとって、焦らずに作業を行うことをお勧めします。
少なくとも3時間くらいはみておいた方がよいでしょう。

はんだづけは、付けるのは簡単ですが、剥がすのは大変な場合も多いですので、取り付ける順番、向きなどを慎重に確認しながら、ビルドガイド通りに作業を一つずつ進めていくとよいと思います。
取り返しのつかない系の失敗としては、PCBのパッドを剥がしてしまう、というものがあります。これは、部品を剥がそうとしなければそうそうその状態には陥らないといえますので、間違えずに作業することがとにかく重要です。

はんだづけに自信がない、という方は、上記記事で記載されているような、部品点数が少なくて仮に失敗しても財布がそこまで痛くないもので練習してみる手もあります。また、はんだづけをほとんど必要としないか、全く必要としないキット*21を選択する手もあります。
さらには、遊舎工房さんでは、はんだづけ等を行ってくれるサービスもあります。
キーボード組み立てサービスshop.yushakobo.jp

ただ、個人的には、DIYキーボードの醍醐味は、「自分で作ること」そのものにあると思いますので、ぜひご自分で製作にチャレンジすることをお勧めしたいです。

ハードウェア面の組み立ての難易度は、キットに大きく依存しますので、購入の前にビルドガイドを読んで判断していただくか、実店舗であれば、店員さんに聞いてみるのもいいかもしれません。
また、遊舎工房さんでは、工作室ではんだごて等の機材をレンタルするサービスも行われています。技術的なサポートも受けられるようなので、店舗に足を運べる方は利用する手もあるかもしれません。
yushakobo.jp

ソフトウェア

DIYキーボードを組み立てる際のもう一つのネックは、ソフトウェア面であると思います。
私自身もITエンジニアではないので、その点がやや不安でした。

ここで、DIYキーボードにおいて、プログラミングの知識が必要かといわれると、必ずしも必要ではない、というのが昨今の事情だと認識しています。
どういうことかを以下で説明していきます。

自作キーボードにおいては、キーボード用のオープンソースファームウェア*22が存在しています。
よって、そもそも一からファームウェアを作成する必要はありません。

とはいえ、一昔前までは、黒い画面でコマンドを打ち込んで環境を構築し、コンパイルする必要があったようです。
仮に、この作業をやるとしても、大学で一コマだけ情報の授業があってコンパイルしたことがある、という程度でもなんとかなるように思います*23
しかしながら、自分でファームウェアをビルドしようとすると、エラーを読んでコードを修正できる、公式のドキュメントを読むことができる、わからないことは調べられる、というレベルの解決力は求められる場合があるといってよいでしょう。

じゃあ、全くプログラミングとかをやったことがないけど難しいですか、というと、最近は大丈夫なものが比較的多い、というのが答えになります。
例えば、「Remap」と呼ばれるwebサービスがあります。
この「Remap」では、ファームウェアの作成、書き込み、キーマップの変更*24等が、マウス操作のみでも行えます。プログラミングに関する知識は必要がない、といっても過言ではないと思います。
詳細な手順の程度については、以下のサイトをご参照ください。
salicylic-acid3.hatenablog.com

なお、QMKについていえば、たまに「破壊的変更」が行われる場合があり、0.18系から0.19系に移行する際には大きな変更が行われました。
これに関して、「Remap」は、しばらく0.18系のみをサポートしていた状態でしたが、比較的最近、0.22系に対応していただいた形です。詳細については、以下の記事をご参照ください。
www.eisbahn.jp

一度Remap対応のキーボードを組み立てたことがありますが、手順に沿ってマウスをポチポチしていくだけでキーボードが動くようになり、非常にスムーズでした*25

そもそもとして、上記Remapの前から、「VIA」というツールも存在しています*26
salicylic-acid3.hatenablog.com
このツール単体では、ファームウェアの書き込みができないので、真っ先に紹介はしませんでしたが、キーマップの書き換えは、VIAでも簡単に行うことができます。

また、「Vial」と呼ばれるキーマップ変更ツールもあります。
Vialに対応したキーボードのビルドガイドもよろしければご参照ください。
kbdbuild.vercel.app

このようなツールに対応しているか否かは、そのキーボードのビルドガイドに記載されているはずです。
ご覧になっていただき、もしRemap等の手順が記載されていなければ、他の方法*27でキーマップを書き換える必要があります。

とはいえ、コードを編集してコンパイルする必要があるケースは、ほとんど発生しないといえます。
よって、プログラミングの知識が必要かといわれると、必ずしも必要ではない、という状況であると思います。

いずれにせよ、購入しようと思ったキーボードのビルドガイドを見ていただき、ソフトウェア面でもいけそうか、というのを事前に判断していただくのがよいかと思います。

トラブルシューティング

DIYキーボードにおいて、組み立てたはいいが何やら挙動がおかしい、というのはよくある話です。
初めてだと、何が原因でこうなっているかの検討もつかないと思います。とはいえ、キーボードの回路はそこまで複雑ではありませんので、だいたいはお決まりのパターンがあるようです。
遊舎工房さんの記事で、何が原因かを切り分けるためのフローチャートを作成されているものがありました*28
shop.yushakobo.jp

ちょっとやってみたけどよくわからない、という場合、コミュニティに質問するのもありですが、原因を推測するための手がかりを極力記載していただくのがよいと思います。
もし、調べてもわからないことが発生した場合は、購入先(キット製作者)に問い合わせる形になると思います。

最低限の礼節さえわきまえていれば*29、助けてくれる人が多く、初心者にもやさしいコミュニティであると感じています。
私もコミュニティに助けられながら自作キーボードを製作しており、コミュニティの皆さんには感謝してもしきれません。

ネット上の誰かに聞いてみる勇気と礼節があれば、コミュニティの力も借りながらトラブルを解決できると思いますので、安心して(?)沼に飛び込んできてください。

まとめ

自作キーボードの沼について私が現状知っている限りをまとめてみました。
見た目、フィーリング、使い勝手、効率性等、様々な沼があることを感じ取っていただけたなら幸いです。
また、いくつか例をご紹介していますが、何か興味を持っていただけるものがあるならうれしいです。

私自身は、主に物理配列の沼と、キースイッチの沼、さらには、打鍵感・打鍵音の沼にハマっていますが、楽しく自作キーボードを作っています。
自分にとっての最高の一台が完成する気配がないので、しばらくは楽しめそうな趣味だなと思っています。

皆さんも自作キーボードデビューしてみませんか?
「沼」でお待ちしております。

この記事は、自分で設計したQuokkaというキーボードで書きました。

*1:はんだ付けが必要なカスタムキーボードものもありますが、この記事ではDIYキーボードに分類します

*2:Corne Cherry V3shop.yushakobo.jp

*3:Ergo42 Towelshop.yushakobo.jp

*4:Nomu30shop.yushakobo.jp

*5:【委託】Keyball39shop.yushakobo.jp cocotkeebs.com

*6:【委託】Handyman マクロパッドshop.yushakobo.jp

*7:私自身がカスタムキーボードを所有しているわけではありませんが、カスタムキーボードに近い構成のキーボードを自作したので、それに近い感覚だと思って書いています。

*8:ポリブチレンテレフタラート

*9:アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂

*10:www.cerakey.com

*11:アーティザンキーキャップとも。Artisanから

*12:artisanキーキャップに関する人気の同人グッズ214点を通販できる! - BOOTH

*13:Artisan Keycaps

*14:

*15:www.cherrymx.de

*16:もっとも、最近のスイッチは工場における潤滑(ファクトリールブ)がよくされていることも多く、そのままでも十分なことも多いです。

*17:キメラスイッチ、フランケンスイッチとも呼ばれます

*18:スイッチプレートと呼ばれる場合が多いです

*19:修飾キーとも。Shiftキー、Ctrlキー等がこれに該当します。

*20:例えば、article.murata.com

*21:はんだ付け済み簡単キットshop.yushakobo.jp

*22:例えば、QMK docs.qmk.fm

*23:私はそのようなレベル感ですが、QMKで3時間くらい格闘し、何とかできました。

*24:本来的には、キーマップの変更を行うたびにファームウェアを作成して書き込む必要があったのですが、その必要もありません。

*25:このような環境を構築していただいた先人の皆さんには非常に感謝しています。

*26:むしろこちらが本家です。

*27:例えば「QMK Configurator」 salicylic-acid3.hatenablog.com

*28:PCと接続してもうんともすんともいわないという際に、ケーブルが充電専用のものだった、というのは何回か見かけました。

*29:誰かに教えてもらうということは、誰かの時間を割いてもらう、ということであるわけで、何でもかんでもすぐに聞くという態度は推奨されないと考えます。もっとも、このことは自作キーボードに限ったことではない、というのはその通りです。

KEEB_PD_R174の写真の話

まえがき

この記事は、KEEB_PD Advent Calendar 2023の記事です。
KEEB_PD Advent Calendar 2023 - Adventar
前の記事はaki27さんの記事でした。40 %以下のキーボードがいっぱいで目の保養でした。それにしても優勝率すごいですね。

自己紹介

ぴろりどんといいます。主にX(旧Twitter)にいます。
昨年(2022年)の夏くらいから自作キーボードを作り始め、今ではアルミの削り出しケースを発注するなど、キーボード沼にどっぷりです。
主に40 %サイズのキーボードを設計しています。今年設計したキーボードについては、以下の記事にまとめましたのでよろしければご覧ください。
piroriblog.hatenablog.com

そもそもKEEB_PDとは?

毎週日曜日の19:00~21:00に、いい感じのキーボードの写真をX(旧Twitter)に投稿するイベントです。
例えば、以下のような告知がなされ、ルールに則って写真を投稿します。


私も新しいキーボードを作ったり、新しいキーキャップが届いたりして見せびらかしたいときに投稿させていただいています。
皆さんのキーボードを見る良い機会でもあり、投稿しないときでも楽しく見させてもらっています。

今年それなりに撮れたと思っている写真

KEEB_PD_R174に投稿した写真

第174回(12/3)開催のKEEB_PDに投稿した写真です。


タイトルは、キーキャップがKAT MizuのMoonlightであることと、ノブが月に見えることからつけてみました。写真で月が3つも見えるのはご愛嬌です。
以下、この写真に関する情報です。

キーボード

  • Keyboard: Paren48(Aluminum case)
  • Switch: Kailh Clione Limacina/Tactile, Durock Sea Glass, Kailh BOX Switch V2 White
  • Keycap: KAT Mizu(Moonlight)

カメラ

Google Pixel 7

撮影環境など

室内で夜間撮影したものです。
大層な機材は持っていませんが、ちょっと工夫をするとそれっぽく撮れることを学習しました。

ライティングは、向きがグネグネ変えられるフレキシブルアームを有するデスクライトを用いています。デスクライトに2 mm厚のPP板を拡散板として取り付け、その拡散板を通した光を白い壁と天井に向けて照射し、その反射光が被写体に当たるようにしています。比較的柔らかな光が当たるようになっているかなと思います。
フレキシブルアームだと、固定できて、かつ、光源の向きを手軽に変えられるので、意外と使い勝手が良いのかもしれないと思いました。写真でいうと、右斜め上方向から主な光が当たるように調整しています。
全然写真を撮る人ではなかったのですが、ライティングの重要性を最近実感しています。レフ版ってなんだよ、と思っていた時代が私にもありました……

撮影機材というほどのものではないですが、Pixel 7で撮影しています。
1倍で撮影すると、端が歪んだりしやすいので、2倍にしてやや離れた位置から撮影しています。やや遠くから撮影すると、スマホが影になりにくいので、その点でも良い手段だと思っています。
本当はちゃんとしたカメラのほうが良いのかもしれませんが、スマホのカメラでもそこそこの写真が撮れるんだなあと感じています。

ちなみに、キーボードの下に敷いているのは、そこそこきれいなアイロン台です。
そこそこいい感じの色で、悪目立ちもしないテクスチャなので、思ったよりいい感じの背景にできたと思います。
何かデスクマットを買おうかなあと思っていますが、今使っている机があまり大きくないので、なかなか買えずにいます。何かちょうどいいものを探すとします。

キーボードに関するコメント

キーボード本体

キーボード本体は、Paren48のアルミ削り出しケースのバージョンです。
Paren48は、ロータリーエンコーダを片手で2つ搭載する分割型キーボードです。湾曲した配列を有するカラムスタッガード系の配列を有しています。詳細は以下の記事をご覧ください。
piroriblog.hatenablog.com
現在、職場のメイン機として使っています。特殊なマウント方式を採用しているので、やや硬めの感触でありながら、疲れにくいキーボードに仕上がったと自負しています。
横から見るとこんな感じで、マウントに使っているステンレス板がチラ見えするデザインになっています。

側面がよく見える写真

なお、ロータリーエンコーダは、カーソルキーなどとして使っています。文章の編集もよく行うので、カーソルキーの使用頻度が高く、すぐにアクセスできる位置にあるのは使い勝手がよいです。

スイッチ

このキーボードですが、やや音がケース自体に響く感があり、スイッチの選定にちょっと難儀していたのですが、 Kailh Clione Limacinaのタクタイル*1にしてみたところ、音的にいい感じだったので、キーキャップの交換とともに入れ替えてみました。
なお、キースイッチを3種類記載しているのは、アルファに使っているキースイッチと、モディファイヤに使っているキースイッチと、サムクラスタに使っているキースイッチとが全て別であるためです。個人的な趣味ですが、サムクラスタに使うのはリニアにするようにしています。

ところで、個人的にはSea Glass*2も結構気に入って使っています。
5色混ざっていて、淡いきれいな色をしていることがフィーチャーされがちですが、基本性能もよく、音も控えめで使いやすいスイッチの一つです。皆さんもぜひ試してみてください。

キーキャップ

キーキャップは、ブラックフライデーのセール期間に、前々から買おうか非常に悩んでいたKAT Mizu*3が安くなっていたので買ってしまいました。
黒の筐体のキーボードに何をつけようか迷っていたのですが、紺系統のキーキャップがいいかなあと思って探していました。
KAT Atlantis*4とも迷ったのですが、ノブがアルミのものを使っているので、レジェンドの色が水色のほうが合うのかな、と思ってKAT Mizuのほうにしてみました。

あと、KAT Mizuにはカラーバリエーションがあるのですが、明るいほうのカラーだと、若干黒筐体に合わないのではないかと思ったので、Moonlightのカラー(ベース:ネイビー、レジェンド:水色)を選択しました。
どちらでもおそらくマッチしたとは思うのですが、Mizuはかわいい感じのレジェンドで気に入っています。ノベルティを買って正解でした。

全体的にシックな感じにまとまったのではないかと思います。
しばらくはこのセッティングで使おうと思います。

まとめ

スマホでもライティングを工夫すれば、ある程度の写真が撮れることはわかりましたが、一定の限界はあるなあと思っています。
よりいい感じに写真を撮ろうとしたら、きちんとしたカメラを買うべきなのはわかりますが、現状ではそこまでのモチベーションがないので、しばらくはスマホで撮影することになると思います。
とはいえ、どうしてもうちの子をカッコよく撮りたい、というモチベーションが湧いてきたら買うかもしれません。ただ、カメラを買うとレンズが分裂して増えていくのをよく見かけますので、そのあたりは注意しようと思います。

この記事は、上記セッティングのParen48である程度書いた後、Quokkaで編集しました。

次の記事はriv_mkさんの「プラモとゲーム機とキーボード」です。かわいい写真の背景、気になりますね。