ぴろりのくせになまいきだ。

世間に平和はおとずれなぁい

みんな研究職になりたいのか?

わたしは今、いわゆる研究職に就いています。

2019年10月現在で一年半になりますが、これまでの感想を交えつつ、研究職とは何かということについて、若造ではありますが書こうと思います。
当然ですが、わたしが勤めている会社の状況が色濃く反映された物言いとなりますことをご理解ください。



わたしは理系の大学院を修了したのち、専門に近い分野の企業に就職しました。
適性等を見られたあと、研究所に配属されています。


早速少し脱線しますが、わたしは修士一年のときから就活するまでの時期に、就職するかD進する(プラス三年以上大学に通う)かでとても悩みました。
研究室はとても好きでしたし、恵まれた環境でもありましたし、ボスからレコメンドされてもいましたし、かなりその研究室でのD進を考えました。

結局のところ、主に生活費や学費等のお金に対する不安から、就活をする道を選びました。
今冷静に振り返ると、それなりの確率で学振は通ったんじゃないかとは思いますが後の祭りです。

修士一年のとき、とある企業インターンシップに行って、お金をもらいながら研究できるってすごいな?と感じたのも、修士卒で就職する選択を後押ししました。

しかもだいたい50歳くらいで大学教授になったとして精々1000万の給料ですから、民間でそれなりにやっていれば40もいかないうちにそれくらいになることを鑑みれば、余計にアカデミックの世界に残るのはどうなんだという話にもなります。


それもあってですが、まず第一の感想としては、「研究してるだけでお金がもらえるって未だに変な感覚だけどすごい」です。
確かに企業特有の制限や煩わしさはありますが、それでも研究しているだけでお金がもらえます(大事なことなので二回言いました)。

しかし裏を返せば、何もお金になることをしていないのにお金をもらっていることになります。
企業だと他部門が稼いできたお金を使って研究をしていることになります(大学等の場合は税金ですが)。
お金を稼ぐ、また社会に貢献する、という役割を会社が持つ以上、会社の利益を研究で無駄遣いすることは許されません。
(もちろん大学等でも無駄遣いは許されないのですが。)

しかしながら、研究に携わられた方はお分かりかと思いますが、研究はうまくいかないことの方が圧倒的に多いです。
下手すると1 %うまくいけば御の字です。

このような状況ですので、研究が成功した際の利益の大きさ、可能な限り研究の成功率を上げること、研究進捗状況の定期的な報告、等々が求められます。

直接的なやりがいもない状態で、いつ資金がなくなるか、また上を説得し続けるだけのデータを出し続けられるかという不安、さらにはテーマを終わらせる覚悟を持たなければいけない、というのが第二の感想です。

直接的なやりがいは、ものを作って顧客に喜んでもらうほうが圧倒的に大きいと思います。
やっていることがうまくいくかわからない、という中で研究をし続けなければならないというのは、かなりタフなことだと思います。
しかもお金にならないので後ろ指をさされることもあるわけです。

また、当たり前のことではありますが、経営資源も無限にあるわけではないので、研究の進捗等は経営層に報告しなければなりませんし、学術的にはとても興味深いけどお金になりそうもないことには投資されません。

本質的でないことに時間を使わなければいけないし、場合によっては使うことができない、ということにストレスを感じる人もいるかもしれません。


またまた少し脱線しますが、大学ではお金になることをやる必要はないので(最近はそれも怪しいですが)、お金の無駄だから誰も企業はやりたがらないけど、社会貢献の可能性があるものとしての研究を行って欲しい、と個人的に思うようになりました。

無駄な研究など存在せず、みな何かの役に立つ可能性を秘めています。
何の役に立つんだおじさんがマウントを取りたいだけのしょうもない人なのはそうですが、そういう人たちを言いくるめるだけのバックグラウンドの説明はできないと研究者として失格なのかもしれません。
お金を取ってくることは、まさに言いくるめることでもありますから。

また、企業がお金になりそうな分野に投資するのは理解できますが、役に立たないからといって国としてそれを行うのは非常に危険であると考えます。

研究の多様性は、イノベーションを生み出すバックグラウンドとして必要であると思うからです。
どんな優れた研究も、無からいきなり何かが生まれるわけではないでしょうから。


話を戻しますが、第三の感想として、研究に必要なお金を取ってくるのが面倒、というのがあります。

研究をするにもテーマが必要ですが、これに取り組むに当たって、将来これくらいの時期にこれくらいの利益が見込まれるのでこれくらいのお金と人をかけてもいいですか?というお伺いが必要です。

仮に世の中に出回っていないものを研究しようとすれば、その利益ってどうやって計算するんですか?という話にもなってきます。

これの調査も行わなければなりませんので、それこそ本質的な部分を研究する時間に多くを割けるわけではありません。
加えて先述したように報告もしなければなりませんので、場合によっては実際に手を動かしている時間よりもそういった資料作りや調査に費やしている時間の方が長いかもしれません。
みんなそういったことに忙しいので、ディスカッションの時間もそうそう取れるわけではありませんし、比較的曖昧なまま研究や開発を進めてしまうこともあります。

学術的に追いかけることができなかったが故に、後々の開発で遠回りしてしまうこともあるとは思うのですが、その判断をする人が分かっているとは限らないものです。


第四の感想は、研究職って運の要素がとても大きいのでは?ということです。

自分一人で研究をしているわけなく、組織で研究を進めますので、自分のやりたいことができる時間は限られてきます。
となると、どんな人のもとで仕事をするかということによって研究の環境が大きく変わってきます。

うまくいっているテーマであれば潤沢にお金もつきますし、うまくいけば社会人ドクター(会社からお金をもらいながら博士号)を取ることも可能です。
もちろん人事評価も良いものになるでしょう。

しかし逆はひどいもので、お金がないので結果も出ないのループに陥りがちで、閉塞感もあってかみんなギスギスしがちです。
若いうちは結果をそこまで求められないとはいえ、出世にも関わってくるともいいます。

自分では制御不能な部分はもちろんありますが、腐らずに自分のオリジナリティを出せる部分で勝負したり、周りの環境を変えていく努力をしたりしていくしかありません。
それを認めてもらえたり実を結んだりするかはまた運なのですが、しかし確率を上げることはし続けねばなりません。
例えば担当テーマに関する情報収集であったり、他の分野の知見を取り入れることであったり、はたまたマネジメント術であったり、何にせよ勉強の日々です。

いつか当たることを信じるのではなく、当てにいく、という意識が、自分の置かれた環境をどうにかするということだけでなく、研究職として必要な意識かもしれません。
大学等で研究をするにしても同じことかもしれませんが。

まああまりに酷かったら転職すればよいのです。
研究開発ができる人はきっと課題抽出能力と課題解決能力に優れるはずですから、活躍の場は研究職以外でもあるはずです。



話があちこちに発散してしまいましたが、雑にまとめると、
・企業の研究職は給料が悪くないだけでそれ以外は面倒だし以外と精神的にはタフ
マーケティングのようなことも場合によってはしなくてはいけない
・学術的に面白いことを追えるわけではない
・運の要素が大きいけど努力して何とかしないといけない

というところになるでしょうか。

確かに夢のある職種ではありますが、その裏にはもちろん苦労がありますよという話です。
そして環境も含めて思ったような研究ができるとは限りませんよという話です。

しかしパチンコと一緒で、当たると最高に気持ちいいしやめらないというものです。