ぴろりのくせになまいきだ。

世間に平和はおとずれなぁい

パンチェッタをつくろう

3回くらい作ってみて要領がわかってきたので、備忘録として残しておきます。

最初に断っておきますが、パンチェッタは生肉を放置しておくことで作りますので、適切にハンドリングされない場合は食中毒の危険があります。作ったパンチェッタは加熱してから食べることを推奨します。また、パンチェッタの作製は自己責任において実施してください。
(ちょっと怖いことを書きましたが、思ったよりおいしいのでぜひやってみてください。)


そもそも「パンチェッタ」とは何かという話ですが、そもそもイタリア語で「豚バラ肉」の意らしいです*1
狭義には、豚バラ肉を塩漬けにしたもの、ということらしいです。
今回の記事は、当然ですが、豚バラ肉を塩漬けしたものの作り方になります。

何に使うかというと、イタリア料理はもちろんのこと、ただの塩漬け肉なのでどのようなジャンルの料理でも使えます。例えばカルボナーラやアラビアータ等のパスタソースにしてもいいですし、スープに入れてもおいしいです。調理方法については後述します。

ちなみに、やることはいたって単純で、豚バラブロックを塩漬けにし、腐敗しないように放置しておくだけです。
そうすると、不思議なことに、うまみのあるしょっぱい豚バラブロックになります。

もちろん豚バラブロック自体はナマモノですので、普通に放置しておくと腐敗することがあります。具体的には、酸っぱい臭いがしたり、カビが生えたりします。
そうならないように、パンチェッタを作る際は豚バラブロック中の水分活性を下げます。
水分活性に関する詳しい説明は他に譲りますが、簡単に言えば蒸発できる水の割合で、その温度における飽和蒸気圧に対する食品を入れた容器の蒸気圧の比で定義されるようです*2

要するに、塩漬けにすることで、微生物の繁殖に必要とされる「自由な水」を減少させ、結果として微生物の繁殖を抑制します。
余談ではありますが、保存食の類に塩か砂糖で漬けるか、乾燥させるものが多いのは、水分活性を下げて微生物の繁殖を抑制しているため、といえます。

微生物の繁殖を抑制したまま放置しておくと何が起こるかというと、塩漬け肉が熟成されていきます。
機序については詳しくありませんが、肉に含まれる酵素によってタンパク質が分解され、アミノ酸(うまみ成分)が生成される、とわたしは理解しています。
おそらくですが、いわゆる「熟成肉」も何かしらの方法で微生物の繁殖を抑制しながら、酵素による分解を進めてアミノ酸量を増やしているはずです。
肉は腐りかけがうまい、とよく言われるようですが[要出典]、塩漬けによって腐らせないようにしつつ、酵素によるアミノ酸の生成を促すことで究極的にうまみのある肉にしてしまうのがパンチェッタともいえるでしょう(もっとも、腐らないようにして放置すれば何でもアミノ酸が増える気がしますが)。

前置きが少々長くなりましたが、準備するものと手順について説明していきます。


準備するものは以下のものです。

  • 豚バラブロック
  • 水分を吸ってくれる何か
  • 清潔な容器
  • ラップ
  • ポリ手袋

各項目について説明していきます。

・豚バラブロック

豚バラブロックであれば何でもよいですが、脂身の少ないものを選ぶとよいです。脂身そのものは、特に美味しくなるわけではありませんので。
重さとしては、500 gくらいが取り扱いしやすいです。でかくても良いのですが、万が一失敗したときの精神的ダメージもでかいので最初は小さめでいきましょう。

・塩

主成分がNaClで、食用であれば何でもよいです。岩塩を推奨しているレシピもありますが、普通の食卓塩みたいなやつで問題ありません。
せっかくなのでおいしい塩があるなら使いましょう。クレイジーソルトでもよいです。
ついでに香りづけの何かしらも準備しておきましょう。黒コショウとかローズマリーとかが一般的でしょうか。

・水分を吸ってくれる何か

これは何でもよくありません。推奨されるのはピチットシート(登録商標)*3に代表される脱水シートです。
(半透膜と浸透圧の高い何かの組み合わせなので、自作しようと思えばできるらしいです。推奨はしませんが。)
ちなみに脱水シートは、一夜干し、刺身、燻製の脱水等にも使えるようです。わたしはパンチェッタ作り以外に使ったことがないのですが、わりと良いみたいです。

キッチンペーパーでもできるかと言われると、不可能ではないと思いますが、多分肉に紙がくっつきます。
脱水シートがどうしても、という方は、次善の策としてはリードペーパー*4がよいとは思いますが、試したこともありませんし、あまり推奨はしません。

・清潔な容器

バットでよいです。網があるとなおよいです。
もし直置きする場合は、きちんと清潔にしましょう。さもないとカビがるんるんするか、肉が酸っぱくなります。

・ラップ

ラップです。これは外気を遮断できれば何でもよいです。
ちなみにサランラップ(登録商標)は、2人の開発者の妻(SarahさんとAnnさん)にちなんで「サランラップ」と名付けられたそうです*5

・ポリ手袋

使い捨てのポリ手袋をできれば準備しておきましょう。
我々の手にはごまんと微生物の類がいますから、腐らないように熟成しようとしているものを素手で触るのは得策ではありません。

手順

  1. まな板にラップを敷く
  2. ポリ手袋を装着し、豚バラブロックをまな板の上に置く
  3. 豚バラブロックに塩(と香りづけ)をすりこむ*6
  4. 網を敷いたバットに肉を置き、上からラップをかけ冷蔵庫で一晩放置する
  5. ドリップの量を確認し、何滴かたれている程度なら塩を足す*7
  6. 丸1日後、ポリ手袋を装着した手で取り出してラップを敷いたまな板に肉を置く
  7. 脱水シートで肉を包み、さらにラップで包む
  8. これを冷蔵庫で1週間ほど放置する*8
  9. 完成!

前置きでも書きましたが、やっていることは塩漬けにしたうえで水分を抜き、その状態で放置しているだけです。
コツとしては、放置するだけなのであんまりないのですが、とにかく清潔な状態に保つことを意識します。素手では触りません。
一度失敗しかけたことがあるのは、工程5であんまりドリップが出ていない状態で熟成を行ってしまったときで、そうすると酸っぱくなります。
塩は調理前に抜くか、塩分が生きるように調理すればよいだけなので、多い分にはそこまで問題になりません。
熟成期間ですが、適切に管理されていれば1か月くらいはいけるんじゃないかと思います。

調理例

先述したように、なんかうまみのある塩漬け肉なので、何にでも使うことはできます。ただし、生で食べることはお勧めしません。
調理法としては、使う前に水につけて塩抜きをするか、煮出すような工程があるかのどちらかが好ましいです*9。そのままだとまあしょっぱいので。
塩抜きの程度の確認は、切れ端を焼いて食べてみる方法がよくとられるようです。

以下、やってみた(やってみたい)調理方法について挙げてみます。

焼くだけ

薄く切って焼くだけです。酒のつまみとしては良いです。ちょっと油が出るので、ビールが良いですかね。
燻製にしても良いです。シンプルにうまいです。

カルボナーラ

ベーコンの代わりに使います。細めに切って香ばしく焼くとより良いです。燻製にしたものを使うとさらに良いです。
塩抜きはしなくても、ちょっと牛乳で煮出す時間があればよいと思います。

アラビアータ

これもベーコンの代わりに使います。アラビアータに使うときは少し大きめに切っても良いかもしれません。
これも塩抜きをせず、トマトでしばらく煮出すといい感じになります。
アラビアータに限らず、トマトソースパスタはおいしいと思います。
色々調理はしてみましたが、一番感動したのはアラビアータです。

ポトフ

ウインナー等の代わりに入れます。これだけで相当旨味が出るので、下手するとその他の調味料は不要です。
圧力鍋でやったことがあるのですが、やわらかくてやたらうまみのある肉になるので、少し不思議な感じです。
当然ですが、ポトフに限らずスープ類はおいしいです。

ピザ

これはやったことがないのですが、多分炙る系もおいしいと思うのです。
塩気があるので、アクセント的にも使えるんじゃないでしょうか。
野菜のオーブン焼きの表面に、細かく切ったパンチェッタをのせておくと幸せになれるような気がします。

炒め物

ジャーマンポテトが代表例でしょうか。
炒め物に関しては、塩分が肉から移動しにくいので、塩抜きをすることが推奨されます(やったことないですが)。
細かく切れば塩抜きまでしなくても良いかもしれません。
チャーハンというかピラフに入れたことはありますが、まあ塩気が強いのでうまく調整してください。

ごはん

パエリアやリゾットようなものに使ってもおいしいと思います。
どの系統の味付けにするかは少々悩ましいですが、炊き込みご飯も良いかもしれません。


他にも何かおいしそうな使い方がありましたら、ぜひ教えてください。

案外簡単にできるので、ぜひ試してみてください。
牛肉で同じことをやるとどうなるんだろうと思って気になっているのですが、最近買い物に出かけてもちょうどいいブロック肉を見かけないので、この件に関してはまたご報告します。

*1:Wikipewdiaより、URL: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%83%E3%82%BF

*2:調べて初めて知りました、例えばWikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E5%88%86%E6%B4%BB%E6%80%A7

*3:オカモト株式会社HP: https://www.pichit.info/

*4:イオン株式会社HP: https://reed.lion.co.jp/

*5:旭化成ホームプロダクツ株式会社HP: https://www.asahi-kasei.co.jp/saran/products/saranwrap/history.html

*6:塩は結構たくさん、肉の重量に対して3~5 %とも

*7:もちろん全くたれていない状態でも足してください

*8:熟成工程。念のため、脱水シートは2日に1回は交換する

*9:ちなみに塩抜きをわざわざやったことがありません