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4行5列のキーボード「Zircon40」を設計してみた

はじめに

もしかして片手6列も必要ないのでは? と思ったので実証用のキーボードをだいぶ前に設計していました。
設計して組み立てたのは3月のはじめでしたが、その振り返りを忘れていたので、いまさらながら記事を書いています。

ということで、ご存じの方はご存じかもしれませんが、PCB(プリント配線基板)のサイズが10 cm角に収まると、非常に安く作ってくれるサービスがあります。
もし、5列で済むならそのサイズに収まる可能性が高いので、今後のために試してみようと思いました。

なお、キーボード名は、40キーであることから、原子番号40のジルコニウム(Zr)にちなんだ名前にしようと思い、ジルコニウムが含まれる宝石であるところの「ジルコン」からとりました。

Zircon40外観

今回、スイッチはMXだけでなく、chocも対応するようにしました。今回の組み立てでは、Lofree Ghost switchを採用しました。
Lofree Ghost switch / linear (90pcs)shop.yushakobo.jp

以下、今回のキーボードについて詳細に振り返っていきます。

コンセプト

上述したように、10 cm角に収めるというのが一つの目的でした。
また、そのようなキーボードが実用に耐えるかのテストを目的としていました。
ついでに、その当時はLofreeのロープロファイルスイッチが発売になってちょっとたった後くらいで、ずっと気になっていたので、せっかくならそれを採用したキーボードを設計したいという思いもありました。
よって、上記のような外観のキーボードができあがりました。

ロープロファイルスイッチはそんなに交換しないと思い、ロープロファイルのフットプリントは直にはんだ付けをする用、MXスイッチは交換することもありそうだからソケット対応、というちょっと変なフットプリントになっています。

配列

若干無理やり10 cm角に収めに行ったところはあり、若干窮屈ですがコロンとした形にまとまったと思います。
カラムスタッガード(列ズレ)配列を採用しながら、中指~薬指担当列の下あたりにロータリーエンコーダがある、いつもの私のキーボードの配列ですが、そこから小指担当列を1列バッサリ切ってしまいました。
小指キーの下げ幅がやや大きい代わりに、親指クラスタが内側に飛び出ていないので、他のキーボードから乗り換えると、若干押し間違えそうになりますが、まあ許容範囲内です。

なお、小指キーの上のキーは、薬指を伸ばして取りに行くことを意図した配置になっています。
分離していないので誤爆が若干不安でしたが、ロープロファイルであればそこまで問題はなさそうかな、という感触です。

ケース

珍しくサンドイッチマウントとしてみました。
よく見ていただくとわかりますが、キーの真下にマイコンボードが配置されており、若干トリッキーな実装になっています。
マイコンボードをキーの下に実装するとなると、さすがにマイコンボードが厚み方向に飛び出しがちなので、若干傾斜がつくようにPCBで脚を作っています。

マイコンボード実装部分拡大図

はんだ付け作業というか、取り付け作業はややトリッキーでしたが、マイコンボードを使用する場合の配置の自由度は結構上がると思ったので、機会があればこの配置はまた試してみようと思いました。
なお、このマイコンボードの配置方法は、algさんのキーボードを参考にさせていただきました。
blog.alglab.net

一応トレイマウントチックな3Dプリント用のデータも勢いで用意はしましたが、結局使わずじまいです。

使ってみた感想

使ってみた感想を一言でいうなら、「別に何とかなるがあえて5行にする意味もあまり見いだせない」です。

キーマップをちょっと工夫して、小指担当列に通常アサインされるキーを別のレイヤーに押し込んだり、長押しにモディファイヤキーを仕込んだりしましたが、思ったより何とかなります。
例えば、zキーの長押しにCtrlキーを、aキーの長押しにShiftキーを仕込み、qキーのダブルタップにtabキーを仕込むなどしました。
思ったより誤爆はしないですが、ちょっとタイピングのリズムが崩れると、aを押したつもりが、Shiftになってしまう、ということは発生します。
この辺りの調整は、QMK側でうまく設定すれば軽減できることであるのは理解しています。
例えば、以下の記事は参考になると思います。
golden-lucky.hatenablog.com

ただ、そこまでして5列にして使うか? と問われると、そこまでしなくても6列でもいいか……という感想でした。

一方、確かに小指を大きく動かしたり、手首をひねったりする機会が減るので、もし3Dキーボードをまた作るというときには、5列で作ろうかな、と思わせるポテンシャルはありました。


ところで、Ghostスイッチですが、確かに良さは感じましたが、次もこれにしよう、とまではなりませんでした。
非常にタイトにできていて直進性が高く、底打ち音もなかなか良く、しかも(一部キーキャップが干渉する可能性があるものの)MX用のキーキャップが使えて、それでいてロープロファイルという優れものです。

しかしながら、スペックよりもだいぶ重く感じるスイッチです。
何を重く感じるかというと、最近のスイッチにありがちといえばそれまでなんですが、潤滑剤の粘性抵抗をかなり感じます。
よく言えばクリーミー、悪く言えばスティッキー(sticky)な摺動感です。

とはいえ、それが気にならなければかなり出来がよいロープロファイルスイッチなので、とりあえずおすすめできる代物です。
某密林などで直売されていたりもしますので、皆さんもお試しあれ。

おわりに

概念実証は、振り返るまでがセットだとは言えるので、これを書いていなかったのは良くないなと思って書きました。
30 %台が実用的かと言われると、40 %を使い慣れている人であれば多分大丈夫だよ、という感想です。意外と30 %台もこうやれば使えるんだな、というのが見えてきた気がしました。
ただ、そこまで大きなメリットも感じなかったので、何かモチベーションがあれば30 %台もチャレンジしてみてはどうでしょうか、というのが皆さんへのメッセージです。

なお、この基板自体はひっそり公開していました。私の許可なく発注していただいても構いません。
最小構成でよければ、PCBの製造費自体は6ドルとかになるはずです(別途送料はかかりますが)。
ケースも公開しましたが、印刷して試したわけではないので、その点はご了承ください。
piroriblog.hatenablog.com

ということで、いったん5列のキーボードは悪くなかったけどお蔵入りかな、というものでした。

この記事はZircon40で書きました。