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ハイブリッド積層ケースのキーボードを作った話

概要説明

ハイブリッド積層ケースの自作キーボードを作ってみました。
今回、ファームウェアのビルドも自分でやってみた関係で、名前もちゃんと決めており、「raven46」としています。

完成図

特徴点は色々あると思っていますが、簡単に挙げると以下の点です。

  • 40 %サイズのカラムスタッガード系配列
  • 分割型で両手の中指列と薬指列の下に大型のロータリーエンコーダを搭載
  • アクリル板とゴムシートとステンレス板のハイブリッド積層ケース
  • ガスケットマウントでスイッチプレートがアルミ板

後述しますが、スイッチプレートをアルミとしたうえでガスケットマウントとしているので、(個人的には高級キーボードにも劣らない)非常に優れた打鍵感となっています。硬めが好きなので硬めにはしていますが、衝撃がくるような硬さではなく、硬いながらも優しい底打ち感となっています。
また、こちらも後述しますが、キースイッチが配置される下の空間をほぼ密閉しているので、(個人的には高級キーボードに劣らない)非常に非常に優れた打鍵音となっています。
スマホで恐縮ですが、打鍵してみた動画も撮ってみました。


キースイッチ:Feker Holy Panda(ルブ済み)
キーキャップ:akko Cream Keycap Set

以下、こだわりポイントについて説明していきます。

配列

配列は、カラムスタッガード系(縦方向のずれ)のものです。
しかし、よく見ていただくと、通常のカラムスタッガードと違って、やや曲がっていることが分かるかと思います。
これは、Willow配列*1に着想を得た配列です。私もErgootonic49をよく使わせてもらっており、Willow配列はとても良い配列だと思っています。
Willow配列では、一方の方向にキーが湾曲して配置されています。一方で、今回のraven46の配列は、人差し指列はWillow配列と同じ方向に湾曲していますが、中指列~小指列はそれとは逆方向に湾曲しています。
実際のキーボードではやや分かりにくいかと思いますので、最初期のスケッチ的なものを掲載します。

raven46の配列スケッチ

なぜこのようにしたかというと、小指列を下げつつ、下段の行のキーを押しやすくしたかったためです。
スケッチを見ていただくとわかるように、このように湾曲方向を途中で反転させると、上段の行では、指の長さに応じて長さが長くなったり短くなったりするようになりつつ、下段の行ではその差が縮まるようになっています。
したがって、上段の行は指を伸ばせば無理なく打てる位置にキーが配置され、下段の行は、あまり指を曲げなくても打てるようになっています。実際、かなり上段の行も下段の行も打ちやすく、カラムスタッガードに慣れているのもありますが、最初からミスタイプがかなり少なく使えています。
ちなみに、すべての列でWillow配列と逆方向に湾曲している配列も存在していて、「ロータス配列」というようです。したがって、今回の配列は、これらのハイブリッドとみることもできるかと思います。

この配列に想到したきっかけは、前の記事で書いた3Dキーボードを作ったときに指の動きを観察していたときに、「仮にこの動きを平面に落とし込むとどうなるんだろう」と考えていて、「そういえばWillow配列ではこうなっているけど」とWillow配列について考察していたことがきっかけです。
piroriblog.hatenablog.com
前のキーボードのように、仮に立体的にするなら、キー配置をおわん型にすることが多いと思います。これは、人間の指の動きとして、指先がそのような軌跡を描くためだと思います。
ここで、Willow配列は、下段の行に向かうほど、キーが外側に配置されるように湾曲しています。もし、手全体をやや親指側を浮かすようにしてキーボードを打鍵しようと思うと、指先の軌跡を平面上に投影したときにWillow配列のようなカーブを描くはずです。そうすると、そのように手を構えた際にに最もキーボードの距離がある人差し指は、このカーブにマッチするはずです。実際に、Ergootonic49を使っていて、確かに非常に人差し指列は押しやすいと感じます。一方で、他の指に関しては、特に下段の行に関して、やや押しにくいと感じることがありました。
この理由について考察したところ、中指、薬指、小指に関しては、人差し指とは異なった向きに生えていることが要因かと思いました。また、手の甲は、やや湾曲した状態が自然な状態かと思います。そうなると、中指、薬指、小指は、曲げると手の内側に向くようになると思います。これは、人差し指が曲がる方向とは異なる方向であるように思いました。
じゃあ、人差し指以外の指の列は、人差し指とは逆方向に湾曲させてしまえばよいと思い、raven46の配列が誕生しました。

ついでに、親指で押すキーについては、やや距離が離れるように配置を工夫し、押し間違いが減るようにしてみました。押し間違いはかなり少なくなっています。
さらについでに、小指の付け根で押す用のキーもおいてみました。意外と良いです。
あと、ロータリーエンコーダは大好きなので、親指で回しやすい位置に大径のノブが配置できるようにしています。手の甲の真下にありますが、タイピング中は触れてしまうこともなく、かつ、アクセス性も良好です。

なお、この配列に関しては、特に私の許可なく使っていただいて構いません。

積層構成

今回、音が良くなるようにしたいなあと思い、積層アクリルで作ろうと思っていました。
ここで、スイッチプレートをアルミで作りたいなあと思っていたところ、じゃあ重くする観点も含めてトッププレートとボトムプレートも金属にしてしまえばよいのでは、と思い、ハイブリット積層構成としてみました。
また、打鍵感をやわらかくはしたかったので、ガスケットマウントとしています。店頭でKeychron Q2を触ってみて、「理解って」しまったのもあります。
積層構成としては、以下のような構成としました。

今回の積層構成

今回のアクリルの加工は、遊舎工房さんのレーザー加工サービス*2を利用させてもらいました。
また、金属板の加工は、切断堂さん*3にお願いしました。
いずれも精度が高いものを作っていただいて、無事組み立てることができました。
なお、ゴムシートに関しては手で加工しています。

何がどう効いていい感じの打鍵感になっているかはわかりませんが、やや硬めでありながら、底打ち時の衝撃が指にも机にも伝わらず、いい感じの打鍵感になっています。かなり満足です。
また、片手分で600 g以上あるので、安定感があってよいです。重さは正義だなあと思いました。

今見てみると、ネジの数はもう少し少なくても良かったかもなあと思いますが、ProMicroを格納する場所もきれいに囲いたかった関係で、その部分のネジがやや多くなることが分かっていたので、バランス的にまあよかったんじゃないかと思っています。
もしかしたら低頭ネジをうまく使えば、結構隠せたかもなあと思いますが、ネジの数により重厚な雰囲気になっているとは思いますので、これはこれで気に入っています。

ケース構造

今回、積層アクリルとしつつ、キースイッチが配置される空間をほぼ密閉空間となるようにしています。
これは、超高級キーボードのAM AFA*4の構造に着想を得ています。配線に必要なワイヤを積層アクリルの隙間から出してProMicroと接続しつつ、ポロンシートで隙間が埋まるようにしています。
スイッチ下の空間が狭いので、反響音はほぼありません。
積層アクリルのガスケットマウントも相まって、非常に良い打鍵音となっています。
修飾キーにはクリッキースイッチを使用していますが、音はかなり静かになっています。さすがにすべてのキーをクリッキーにする度胸はありませんが。

また、ProMicroが完全に隠れるようにしています。本来はもう少しコンパクトにできたかもしれませんが、見た目を優先しました。つまり、お分かりの方はお分かりかと思いまずが、謎の余白には、ProMicroが配置されています。

あと、ケース全体の外形も結構悩みました。
キー配置がやや湾曲しているので、角ばったような形状にするのは合わないと思いましたが、かといってステンレスのトッププレートにするとなると、あまり丸い形状も合わないと思いました。そこで、直線部分と曲線部分の両方をうまく共存させつつ、角もあるようなデザインとしてみました。ネジとのバランスも相まって、バランスの取れたデザインになったかと思っています。

ところで、このキーボードの名前は「raven46」としましたが、この由来を一応書いておきます。
最初、ケースの外形を角ばったものにしようと思っていました。また、黒の透明のアクリル積層で作ろうと思っていました。「角ばっていて黒いものといえば……」と考えていたところ、ステルス戦闘機が思い浮かびました。私はエースコンバットシリーズをいくつかプレイしていますが、ふとエースコンバット3の「ナイトレーベン*5」を思い出しました(確かステルス機能はなかったと思いますが)。
さすがにナイトレーベンにするわけにいかないと思いつつ、黒くてずんぐりむっくり感があるので、でかいカラスであるところのワタリガラスにしちゃえばいいじゃん、と思い、「raven」を採用しました。
本来は黒の積層アクリルにする予定だったので、今回作ったものはステンレスバージョンということで、「SteelRaven」と呼んだ方が良いかもしれません。

おわりに

普段使いできるものとしては、かなり満足のいくものができたと思います。
今回、ファームウェアのビルドは何とかなることが分かりましたので、あとは基板を発注するのが自作キーボードでやってないことであるようにも思いました。いったんこれで満足していますが、またの機会があったら、今度は基板の発注にチャレンジしてみたいと思います。
最後になりましたが、今回も基板にはSU120を使わせてもらっています。いつもありがとうございます。

この記事は作ったraven46で書きました。

おまけ

アクリルを切ろうと思ったら、結構な面積の端材が出ることが分かりましたので、もう一台キーボードを作ってみました。
名前は、一体型でありながら20キーずつの分離型のデザインとしたところから、ギリシャ語における「20の」という接頭辞にあたる「icosa」を用いて、安直ですが「icosa×icosa」という名前にしてみました。

icosa×icosaの完成図

かわいくてこれはこれで好きです。もちろんですが、ロータリーエンコーダも搭載しています。
また、光るようにしてみました。

光らせてみた図

仏陀スペースがライトアップされてよいですね(?)