ぴろりのくせになまいきだ。

世間に平和はおとずれなぁい

ヴァルハラはいいぞ

ゲームです。神話のあれではないです。ネタバレもないです。

正式には「VA-11 Hall-A ヴァルハラ」です。
開発元はベネズエラのSukeban Gamesで、2016年6月にPC版が発売されています。
2019年5月にPS4, Switch版が発売されており、わたしがプレイしたのはPS4版です(Vita版もあるよ!)。

ジャンルはサイバーパンクバーテンダーアクションとなっていますが、実際にはテキストを読むタイプのアドベンチャーです。
来る客に求めるカクテルを作って提供するゲームで、提供するカクテルによっては物語が分岐していきます。
主人公がよく言うセリフで「一日を変え、一生を変えるカクテルを」(英語版は"Time to mix drinks and change lives."らしい)がありますが、まさにこれの通りです。

ゲームの雰囲気としてはレトロゲーのような感じになっていて、細かめのドット絵です。
音楽はシンセサイザーによるレトロな感じのものです。わたしはわりと好みです。

いい感じにレトロな雰囲気なのですが、物語の舞台設定としては50年後程度の近未来です。
腐敗した政府と大企業により統治される「グリッジシティ」はナノマシンにより監視されるディストピアで、そこにある大企業公認のバー「VA-11 Hall-A」で物語が展開されます。
というよりバーと自宅以外は登場しません。


このゲームの良いところは、前述した雰囲気と音楽に加え、物語の展開が巧みであるところと、会話がウィットに富んでいるところだと思います。


物語の展開が巧み、ということについては、うまく伏線を張りながら物語が進んでいき、バーと自宅における会話からしか描写されないにもかかわらず、外の世界の状況が徐々に鮮明になっていく、と言えると思います。

このゲーム、地の文がほぼなかったと記憶しています。
表示されるテキストはほぼ会話からなり、会話のみから様々な描写がなされています。
この会話から具体的で細かい描写がされるために、説明しているわけではないのに世界観がよくわかる、という表現の巧みさもあると思います。

雰囲気はレトロゲーと前述しましたが、これがまた物語の展開に一役買っていると思います。
描かれる情報が制限されるので、小さな変化がよく分かり、伏線が伏線として機能しやすくなっていると捉えています。

一言でいえば、構成と描写が良くできている、というところだと思います。


このゲームのキモである会話ですが、これが個人的には大好きです。
どう考えてもジャパニーズオタクカルチャーに影響されているところもあって好きです。
下ネタがじゃんじゃん出てくるので人を選ぶとは思いますが。

訪れる客がそれぞれ個性的で、アンドロイドも水槽に浮かぶ脳ミソも猫耳少女も犬も来ます。
そしてそれぞれバーテンダーに愚痴、説教、下ネタや恋愛観などを語っていくのですが、これもまた個性的で面白いのです。
お酒が入っているからということなのか、結構赤裸々に語られ、内容としても含蓄たっぷりのもの、ニヤリとしてしまうものや考えさせられるものなど、非常に楽しく進めることができました。

元々英語でしょうから、わたしがプレイしたのは日本語訳版ということになりますが、違和感もなくギャクもちゃんとしていて、翻訳グッジョブと言わざるを得ません。

あと個人的には、主人公の性格が芯は強いながらも悩むこともあり、そしてオタク、というところがとても好きです。



ネタバレ有りでこれがいいあれがいいというのを言いたい気持ちもありますが、こういうのは心のうちにしまっておくほうがいいかなと思っております。

万人受けする作品ではないですが、刺さる人には刺さる作品だと思います。
新しいながらも古き良きゲーム、と言えますし、作り手の愛が感じられる作品です。

値段もお手頃ですしプレイ時間それほどかかりませんし、気になる方は軽率に手を出してみると良いのではないかと思います。